空飛ぶクルマ開発のSkyDriveがプレシリーズDで83億円を調達。日本発の企業、大阪万博でデモ飛行

日本のエアモビリティ開発スタートアップのSkyDriveは2025年7月4日、プレシリーズD資金調達ラウンドでの83億円の確保を発表した。
SkyDriveは2018年、トヨタ自動車出身の福澤知浩CEOが設立。本社や開発拠点は愛知県豊田市にある。
世界的トレンドと違わず、電気で動く「空飛ぶクルマ」
エアモビリティ、とりわけ「空飛ぶクルマ」と呼ばれる航空機は、日本国内では最近、あまり聞かなくなったキーワードだと感じる読者もいるかもしれない。しかし、ATXが2025年上半期に取り上げてきた中だけでも、米ドルにして億単位($100m=約143億円。現行レート、以下同)以上を調達する空飛ぶクルマ関連のスタートアップは、決して珍しい存在ではなかった。
たとえば、1月9日に取り上げた米Joby Aviation。報じた時点では最大$300m(約430億円)の調達を目指しており、結果的に調達額は$250m(約359億円。5月27日に資金調達完了)にとどまったものの、巨額の資金獲得となったことには変わりない。Joby Aviationは、エアタクシーを開発するスタートアップである。
参考記事:エアタクシー開発の米スタートアップ・Joby AviationがPOで最大450億円獲得を目指す。直近のトヨタからの投資と合わせて1500億円超を調達へ
さらに2月にはeVTOLを開発する米Archer Aviationが$301.75m(約433億円)を調達。4月には、ハイブリッド機を開発する米Electra Aeroが$115m(約165億円)を調達したというように、海外では空飛ぶクルマへの期待は根強い。
参考記事:eVTOL開発のArcher Aviationが459億円を調達。前年12月に続いての資金確保、防衛用ハイブリッド機開発を明言
参考記事:ハイブリッド航空機開発の米Electra AeroがシリーズAで163億円を調達。将来はゼロエミッション飛行を目指す
また、以上の企業が開発するモビリティから分かるように、電気やハイブリッドで駆動する環境対応を意識した機体が目立ち、他には防衛用途で開発するスタートアップも見られる。
こうした中で、日本企業であるSkyDriveが開発する空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」は、バッテリーからの電気によって12基のモーターを駆動。この点で、世界的なトレンドや社会的要求に違わない形での開発を進めていることが、うかがえる。
SKYDRIVE(SkyDriveプレスリリースより)
SKYDRIVEの乗客は2名(さらに操縦士1名で合計3名が搭乗可能)と、この点は3〜4名程度がキャビンに乗れる海外の機体と比べると、若干、物足りなく感じる。しかし、航続距離は15〜40キロメートルであり、たとえばArcher AviationのeVTOLは速度によって航続距離が20〜50マイル(30〜80キロメートル)に変化することや、日本で離発着できる場所を考えると、大きく劣るわけではなさそうだ。
このSKYDRIVEは、7月31日から8月24日にかけて大阪・関西万博の会場でデモフライトを行うと、発表があった(火・水曜日は飛行なし)。万博に入場可能なチケットがあれば予約などは必要ないが、混雑が予想されることをSkyDriveは広報している。
なお、SkyDriveは空飛ぶクルマ以外にも最大2トンを運搬できるドローンを開発しており、国内各地で実証を行っている。
日本の型式証明取得を目指す
プレシリーズDは、邦銀が主導。金融・ベンチャーキャピタル(VC)以外の事業会社で投資に応じたのは、以下の通りだ。
- 九州旅客鉄道(JR九州)
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
- ユニバンス
- 大林組
- 関西電力
- スズキ
- 豊田鉄工
- 日本発条
資金は、日本の型式証明取得に向けた計画の策定などに利用する。
SkyDriveの福澤CEOは、「一社一社のご出資があってこそ、技術開発の質を高め、事業展開の可能性を広げることができました」「皆様との緊密なパートナーシップを礎に、一日も早い社会実装を目指してチーム一丸となって邁進してまいります」と、投資家への感謝を述べた。
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