ニュース記事

Figure社が第3世代ヒューマノイドロボット「Figure 03」を発表

INDEX目次

Figure社は米国カリフォルニア州に拠点を置くヒューマノイドロボット開発企業である。「人のように考え、動き、働く汎用ロボット」の実現を目指し、AIと人型ハードウェアを統合した自律型ロボットを開発している。労働力不足の解消や危険作業の代替を目的とし、工場・物流・家庭など多様な環境で人と協働できる存在を志向する。TeslaやBoston Dynamicsと並ぶ次世代ロボットメーカーとして注目を集めている。

2025年10月、Figure社は第3世代ヒューマノイドロボット「Figure 03」を発表した。視覚・触覚・運動性能を全面的に刷新し、量産と家庭・商用利用を前提とした設計が特徴である。独自AI「Helix」と高精度タクタイルハンドを搭載し、日常環境での物体操作能力を大幅に向上させた。新製造拠点で年間1万台規模の生産を計画しており、同社が実用化段階へと進んだことを示す重要なマイルストーンである。

※タクタイルハンドは微細な力加減を感知できる触覚センサー付きの手部であり、物体の状態を判断しながら人のように繊細な操作を行うことができる。


なお、同社は2025年9月にシリーズCラウンドを実施し、累計資金調達額が10億ドルを超えたことを発表している。これにより、研究開発から量産・商用展開へと体制を拡充し、ヒューマノイドロボットの社会実装を加速させている。今回のFigure 03発表は、この資金調達を背景に、技術・製造・運用の各面で実用段階へ移行する転換点を示すものである。

視覚・触覚・AIを再設計したFigure 03

Figure 03は、視覚・触覚・運動性能を全面的に再設計した第3世代ヒューマノイドである。新たなカメラ構成により、フレームレートを2倍、レイテンシを1/4に低減し、視野角を60%拡大した。これにより、複雑な環境下でも精密な空間認識と物体追跡が可能となった。家庭や商用空間など、変化の多い実環境での安定動作を実現している。

手部には新開発のタクタイルハンドを搭載し、手のひらカメラと指先センサーで三次元形状と力加減を同時に把握する。指先は3グラムの力の変化を検知でき、柔らかい物体や不定形な素材も正確に扱うことが可能である。これにより、Figure 03は従来の産業ロボットでは困難だった繊細な動作を自律的に実行できるようになった。

制御中枢には独自AI「Helix」を搭載し、視覚・言語・動作を統合してリアルタイムに判断・制御を行う。ハードウェアは量産を前提に軽量化・モジュール化され、UN38.3準拠の安全セルとワイヤレス充電機構を備える。これらの技術統合により、Figure 03は研究試作段階から実用化段階へ移行するための完成度を達成している。

量産体制『BotQ Factory』の確立と家庭・商用両対応型ヒューマノイドの実現

同社は、Figure 03を単なる試作機ではなく、量産と実運用を見据えた製品として位置づけている。新設の製造拠点「BotQ Factory」では、初年度に年間1万2千台規模の生産を目指し、4年以内に10万台体制への拡張を計画している。部品点数の削減や射出成形・ダイキャスト化など量産工程を導入し、安定した品質と供給を実現する体制を整えている。

開発目的は、家庭と商用の両領域で稼働可能な汎用ヒューマノイドの実現である。Figure 03は人間の生活空間を前提に設計され、安全性・耐衝撃性・静音性など運用上の要件を満たしている。AI「Helix」による自律動作とワイヤレス充電などの機能が組み合わされることで、日常環境で継続的にタスクを遂行できるプラットフォームとして構築されている。

同社は、Figure 03を「真の汎用ロボット」へのステップと位置づける。ハードウェアとAIを垂直統合し、実環境で人と協働できるシステムを実装することで、将来的な社会実装を視野に入れている。量産設計・安全基準・自律制御の確立を通じ、ロボットが日常生活や産業の現場に浸透する基盤を築くことが同社の方針である。


参考文献:
※1:Introducing Figure 03(リンク



【世界のロボティクスの技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界のロボティクスの技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら







  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら