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睡眠ウェアラブルデバイスを提供するOURAが9億ドルの資金を調達

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ŌURA(オーラ)はフィンランド発のウェアラブル企業で、睡眠・心拍・体温などを測定するスマートリング「Oura Ring」を展開。AI解析により個人の健康状態を可視化し、予防医療やウェルネス支援を実現する。現在は米サンフランシスコを拠点に、グローバルな健康データプラットフォーム構築を進めている。

2025年10月、Fidelityなどをリード投資家として約9億ドルを調達。ICONIQ CapitalやWhale Rockなども参加し、企業評価額は約110億ドルに到達。AI開発、製品拡充、Health Panels強化、販売網拡大などに資金を投じ、世界的な健康イノベーションを加速しようとしている。

精度と習慣化、ウェアラブル機器が直面する本質的な壁

ウェアラブル業界では、データ精度と医療的信頼性の確保が大きな課題だ。同社は独自のAIアルゴリズムと高感度センサーを組み合わせ、睡眠や体温変化などの生体データを臨床レベルで解析する技術を磨いている。大学や医療機関との共同研究を通じて、データの科学的裏付けを強化し、医療・保険分野での応用拡大を目指している。

ウェアラブル製品が直面するもう一つの課題は、利用継続率の低さである。Ouraはユーザーの行動変容を促す仕組みとして、個人の生活リズムに基づいた「レディネススコア」や睡眠コーチングを提供。デザイン性と快適性を両立したリング型デバイスを軸に、無理なく使い続けられる体験価値を設計し、日常生活に自然に溶け込む健康習慣を支援している。

高精度センサー融合とAI解析による生体モニタリング技術

同社製品の最大の特徴は、指輪型デバイスに高精度センサー群を搭載しながらも、わずか数グラムの軽量化を実現している点にある。光学式心拍センサー、体温センサー、加速度センサーなどを独自配置し、睡眠・体温変動・活動量を高い精度で検出。リングという形状を活かし、手首型デバイスよりも安定した計測環境を提供している。

AI解析アルゴリズムも同社の強みだ。膨大な生体データをクラウド上で解析し、ユーザーごとに最適化されたスコアやアドバイスを提示する。特に「レディネススコア」は、睡眠・回復・活動のバランスを総合評価し、日々の行動指針を可視化。データを“行動に変える”ためのインテリジェント設計が際立つ。

さらに、プライバシーとエネルギー効率を両立する独自アーキテクチャも注目される。Ouraはオンデバイス処理を部分的に採用し、個人データを最小限しかクラウド送信しない仕組みを構築。省電力設計により最大7日間の連続稼働を実現しており、ユーザーが意識せずとも継続的にデータを取得できる環境を整えている。

AI活用とハードウェア強化によるヘルスプラットフォーム拡張戦略

今回の資金調達を通じ、AIと製品イノベーションの加速、そしてグローバル展開の拡大を重点方針に掲げた。アプリ上で検査データを統合管理できる「Health Panels」などを導入し、従来の活動・睡眠トラッキングを超えた包括的な健康プラットフォームを構築。デバイス、アプリ、解析の連携を強化し、予防医療・ヘルスインテリジェンス分野での存在感を高めていく。

また、2025年には売上10億ドル超を目指し、ハードウェア基盤の強化にも踏み出す。取締役会に半導体・バッテリー分野の専門家を迎え、カスタムシリコン開発を推進。新製品投入と市場拡大を両輪に、収益性と持続的成長を両立させる体制を整えている。


参考文献:
※1:ŌURA Raises Over $900M to Accelerate Global Expansion and Health Innovation(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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