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ハイブリッド航空機開発の米Electra AeroがシリーズAで163億円を調達。将来はゼロエミッション飛行を目指す

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ハイブリッド駆動の航空機を開発する米Electra Aeroは2025年4月21日、シリーズA資金調達ラウンドでの$115m(163億円)の確保を発表した。

Electraは2020年、John Langford氏により設立。Langford氏は、現在、Boeing傘下となっている無人機(UAV)開発企業のAurora Flight Sciencesの創業者でもあり、米航空宇宙学会(AIAA)前会長だ。本社は、ワシントンD.C.に所在する。

離陸距離はおよそ46メートルのハイブリッド機

Electraが現在開発するハイブリッド駆動の航空機は、「EL9」という名称。下はそのパースだが、主翼の後ろにあるフラップが従来の飛行機よりやや大きく見える。このフラップによる揚力で、エネルギー効率向上を目指す。上昇時や巡航時は、フラップを格納する。

EL9(Electraプレスリリースより)

バッテリーが機体下部にあるのは、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HEV)などと同じだ。また後部にターボジェネレーターを配置し、ここでつくられた電気はバッテリーを通し8基あるエンジンへ供給する。

特に、離着陸時に電力を供給し、燃料消費を削減。また、燃料は当初、一般的な航空燃料を使うようだが、将来的に水素やEフューエルを用いてゼロエミッション飛行を実現するとElectraは訴求する。一方、バッテリーへの給電は、飛行中のジェネレーターによる方法の他、待機時に地上の電源からも供給可能だという。つまり、プラグインハイブリッドカー(PHEV)と同じ仕組みだ。

こうした技術を背景に、EL9が離陸に必要な距離は150フィート(約46メートル)となっており、短距離離着陸機(STOL)として際立った数字を示す。Electraによると、同等の航空機の10パーセントに相当する距離だという。また、乗員・乗客数は9人、最大積載量は3000ポンド(約1.4トン)、航続距離が1100海里(約2000キロメートル)だ。

シリーズAに先立つ2025年3月には、EL9の事前注文が2200件となったことを発表。金額にして約$9b(約1兆3000億円。当時レート)に上るという。発注者には、ローンチパートナーであるBristow Groupやインド、北中南米、欧州の航空会社の名が挙げられている。Bristow Groupは、ヘリコプターを含む垂直離着陸機(VTOL)を政府、民間組織に提供する多国籍企業。提供するVTOLは、人命救助や油田への人員輸送などといった形で利用される。

リードインベスター代表者がボードメンバー入り

シリーズAは、ベンチャーキャピタル(VC)のPrysm Capitalが主導。さらに、Prysm Capital の共同創業者兼マネージングパートナーであるJay Park 氏が、Electraのボードメンバーに加わった。

資金は、EL9の試作と認証に利用する。

ElectraのMarc Allen CEOは次のようにコメントした。

「エレクトラは、革新的かつ実用的であり先進的でもある航空モビリティの飛躍的進歩を実現するという使命を掲げている。そして、EL9ウルトラショートは、新たな商業路線の確立、航空インフラが未整備の地域との連携、新たな兵士の輸送や物流の実現といった機会への扉を開く」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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