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フランスのEV充電プラットフォームWaatが1億ユーロを調達

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フランスのEV充電プラットフォーム企業 Waat は、公共施設や商業施設、集合住宅など多様な場所に向けてスマート充電ソリューションを提供している。AlfenやSchneiderといった主要メーカーの機器を統合し、クラウドを活用した電力最適化や運用管理を強みとする。導入企業にはゼロ金利融資などの支援策も用意し、2030年までに25万基の充電ポイント設置を目指すなど、フランス国内の充電インフラ拡大を牽引している。 

2025年10月、同社はシリーズCラウンドで1億ユーロ(約1.17億ドル)を調達した。リード投資家としてDWS GroupとBpifranceが新規参画し、既存投資家のRAISE Impactも追加出資を実施。今回の資金は、フランス国内での急速充電ネットワークの拡大、エネルギー管理プラットフォームの強化、地方都市や郊外への展開加速に充てられる予定である。

フランスのEV充電インフラ格差解消を目指す

EV普及が進む一方で、フランスでは地域間の充電インフラ格差や、設備の稼働率・信頼性の低下が課題となっている。都市部に偏った設置や、電力負荷の集中による効率低下も問題視されており、利用者の利便性と運営コストの両立が求められている。

同社はクラウド制御によるエネルギーマネジメントで充電設備の稼働を最適化し、設置コストを抑えつつ安定した運用を実現。AIを活用した需要予測や負荷分散機能を強化し、地方や郊外でも持続的に運営できるEV充電ネットワーク構築を目指している。

AIとスマートグリッド連携により電力最適化

同社は、インターネット経由で充電器を遠隔制御できるクラウド管理型プラットフォームを中核に持つ。複数の車両が同時に充電しても電力を自動で振り分ける技術(Dynamic Load Balancing)を採用し、既存の建物でも電力容量を超えず効率的に運用できる。充電器はAlfenやSchneider製などのオープンプロトコル対応機器を採用している。  

ユーザーは専用アプリ「MyWAAT」で充電予約や決済、利用状況のモニタリングが可能。AIによるエネルギー最適化機能も開発中で、過去の充電履歴や電力価格を学習し、最も安く・効率的に充電できるタイミングを提案する。建物全体の電力使用を最適化するスマートグリッド連携にも対応している。

ヨーロッパ全域での拡張と利用体験革新に向けたWAATの次なるステージ

「この調達は、私たちの歴史における大きな一歩です」と社長のPatrick Kic氏は語る。2030年までに25万基の充電設備を設置する目標を掲げ、特に集合住宅や社会住宅、オフィスなど複雑な環境での普及を加速させる。これによりフランス国内だけでなく、ヨーロッパ各国への展開も視野に入れる。

リード投資家DWS GroupのHarold d’Hauteville氏は「私たちは技術、現場支援、社会的責任を組み合わせた統合アプローチに注目しました」と述べる。同社はアプリ「MyWAAT」をAI搭載のスマートエネルギーコーチへ進化させ、利用者が充電時間や料金を最適化できる体験を提供することで、利便性と持続性の両立を目指す。


参考文献:
※1:WAAT lève 100 millions d’euros pour accélérer la recharge électrique en Europe(リンク

※2:同社公式HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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