人工衛星を開発・量産するMuon Spaceが2.5億ドル調達 トヨタ系Woven Capitalも出資
米国カリフォルニア州のMuon Spaceは、地球観測や通信に使う人工衛星を開発・量産する2021年設立の企業である。複数の衛星を連携させ、広い地域を繰り返し観測・通信するネットワークを構築する。衛星本体から観測機器、運用ソフトウェア、打ち上げ後の運用までを一体で提供する。
同社は2026年8月20日、シリーズCで2億5,000万ドルを調達した。Eclipse Capitalが主導し、Google、Salesforce Ventures、トヨタ系のWoven Capitalなどが参加した。累計株式調達額は3億8,600万ドルを超え、資金は衛星の量産と機能拡張に充てる。
11機の運用実績を基盤とする人工衛星の量産
調達の背景にあるのは、実際の打ち上げと顧客案件の積み上がりである。同社は2026年上期に7機を打ち上げ、累計では6回の打ち上げで11機を宇宙へ送り出した。同社が公表する打ち上げ・運用の成功率は100%である。現在は顧客向けに50機超を開発し、このうち13機は今後1年間の打ち上げを予定する。
製造面では、サンノゼに約13万平方フィートの工場を開設した。原材料の受け入れから組立、観測機器や推進装置の取り付け、宇宙環境を想定した振動・真空・温度試験までを同じ拠点で行う。重さ100kgから500kg超の人工衛星を、年間最大500機まで生産できる工場を2027年までに整える計画だが、現時点では設備能力の目標である。
Woven Capitalは、トヨタのグロースステージ投資部門であり、宇宙関連技術を重点領域の一つに掲げる。当社メディアでも以前、人工衛星の共通部分を量産するApex Technologyを取り上げた。Muon Spaceは衛星本体に加え、利用目的に応じた設計、観測機器、運用、データ処理までを一括して提供する点で異なる。
衛星本体・センサー・運用をまとめて設計する技術
同社の技術は、共通化した衛星本体へ顧客の目的に合う観測機器を組み込み、宇宙での運用までをまとめて設計するものである。シミュレーション、電力と熱の管理、衛星の向きを制御する仕組み、データ処理を共通のソフトウェアでつなぐ。設計変更と試験の繰り返しを減らし、同じ構成を複数の人工衛星へ展開しやすくする。
山火事監視衛星には、6種類の波長帯を使う自社開発の赤外線センサーを搭載する。可視光から複数の赤外線までを同時に観測し、煙や雲があっても熱源を見分けやすくする。実証機は一度に幅1,500kmを観測し、衛星の真下では地表を約50m単位で識別する。その範囲内にある5m四方ほどの小さな熱源も検知できるとしている。
衛星から地上へ大量の観測データを送るため、同社はStarlinkの小型レーザー通信端末を衛星へ組み込む。公表値では最大4,000kmの距離で25Gbpsの通信に対応し、衛星が地上局の上空へ来るのを待たずにデータを転送できる。最初の対応衛星は2027年第1四半期に打ち上げる計画であり、宇宙での通信性能は今後の検証となる。
50機超の顧客向け衛星を量産へ
同社は調達資金で、多数の人工衛星の生産、観測機器、衛星上でデータを処理するAI、高速通信の開発を進める。山火事監視や電波情報の収集で実績を増やし、複数機を継続納入する事業へ移れるかが焦点となる。
共同創業者兼CEOのJonny Dyer氏は、人工衛星を使うサービスもクラウドと同じように素早く拡張できる必要があり、複数の衛星を数年ではなく数カ月で展開できる基盤を構築すると説明した。Eclipse創業者兼CEOのLior Susan氏も、設計から運用までを一体化し、個別開発が中心だった衛星事業を繰り返し量産できるモデルへ変えていると評価する。
Woven Capitalの参加により、日本企業との資本面の接点も加わった。ただし、トヨタとの共同開発や日本向け衛星の計画は発表されていない。山火事や災害の観測、海上・物流情報の収集など、日本での利用につながるかは今後の事業展開を確認する必要がある。
参考文献:
※1:Muon SpaceによるシリーズC資金調達の発表(リンク)
※2:同社HP(リンク)
※3:当社メディア「米衛星バス製造のApex TechnologyがシリーズCで287億円を調達」(リンク)
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