ニュース記事

米衛星バス製造のApex TechnologyがシリーズCで287億円を調達。生産能力を増強し、在庫も保有へ

INDEX目次

衛星バスプラットフォーム製造スタートアップのApex Technologyは2025年4月29日、シリーズC資金調達ラウンドでの$200m(約286億円)の確保を発表した。

衛星バスとは、人工衛星の中で電源や姿勢軌道制御といった基礎になる部分を指す。これに衛星の目的、ミッションを果たすための部分を組み合わせて、運用する。

すでに衛星の初号機を運用

Apexは2022年設立で、カリフォルニア州ロサンゼルスに本社を置く。

共同創業者兼CEOのIan Cinnamon氏は、かつてSynapse TechnologyというAIプラットフォーム開発企業を立ち上げ、2020年、Palantir Technologiesに売却した。同じく共同創業者でCTOを務めるMaximilian Benassi氏は、SpaceX出身だ。

Apexのウェブサイトのトップページには、「100~500キログラムの標準衛星バスプラットフォームは、ミッションのニーズに合わせて構成でき、数週間で納品されます」と短納期を謳う。さらに、衛星を使った事業、業務を行いたい人向けに、ウェブ上でのテストも可能となっている。

衛星は仕様を発表済みの2種と今後、発表予定の1種の、計3製品がラインナップに並ぶ。概要は、次の通り。

衛星の名称

Aries

Nova

Comet

軌道環境

LEO / GEO

LEO

LEO

ペイロード重量

Max 150キログラム

Max 300キログラム

500キログラム以上

OAP

180〜800ワット

1キロワット

3〜6キロワット、もしくはそれ以上

ペイロードボリューム

865 × 1170 × 550 ミリメートル

965 × 1185 × 1000 ミリメートル

今後、発表予定

 3製品のうち、Cometがこれから発表となる衛星である。また、軌道環境のLEOは低軌道、GEOは静止軌道(LEOより高度が高い)を指す。OAPとは、軌道を1周するうちにバスからミッション部に供給する軌道平均電力のことだ。また、Aries、Novaの大きさをミリメートル単位で示したが、実際には扇のような形状となっている。

2025年3月には、Aries初号機の軌道投入から1年を迎え、運用を続けている。これにより、一定の信頼性を示した。

Aries初号機が軌道投入から1年を迎えたのは2025年3月5日。その前日である4日にAriesが撮影した写真(Apexプレスリリースより)

新ミサイル防衛「ゴールデンドーム」受注を目指す

シリーズCはベンチャーキャピタル(VC)、投資会社が参加。資金は、Factory Oneと名付けられた生産施設に投入し、生産能力の増強を行い、在庫も置く。また、本件を報じるReutersによると、Apexが米国の次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」の受注を目指していることも、今回の調達と関連しているという。監視などを行う衛星に、Apexはバスの面で参入することを目論んでいると見られる。

Cinnamon CEOは、次のようにコメントした。

「Apexは、米国が宇宙における商業戦略と国家安全保障戦略を実現するための鍵となる企業だ。今回の資金調達の成功により、生産が加速し、需要に先駆けて在庫を拡大することで、防衛大手企業、米国政府、そして国内で最も刺激的な企業を含む革新的な顧客のミッションをより効果的に実現できるようになる」




【世界のスペーステックの技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界のスペーステックの技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら