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宇宙データセンターを開発するStarcloudが2.5億ドル調達 NVIDIAも出資

米国ワシントン州のStarcloudは、人工衛星へGPUを搭載し、宇宙空間でAIを処理するデータセンターを開発する2024年設立の企業である。太陽光で電力を確保し、宇宙空間へ熱を逃がすことで、地上施設の電力・冷却負荷を減らす構想を掲げる。

同社は2026年8月21日、シリーズAの追加ラウンドで2億5,000万ドルを調達し、評価額は23億ドルとなった。Manhattan Westが主導し、NVIDIA、Cisco Investmentsなどが参加した。累計調達額は4億5,000万ドルに達する。

軌道上でのH100実証から量産・打ち上げ確保への移行

同社は2025年11月、実証衛星「Starcloud-1」を打ち上げ、NVIDIA H100を軌道上へ投入した。同社によれば、その後はGoogleのAIモデルGeminiの一バージョンを動かしたほか、小型言語モデルの学習、AI推論や追加学習を宇宙空間で実施した。今回の調達は、こうした単機での検証を次の衛星群へ広げるための資金となる。

当社メディアでも2026年4月、同社の1億7,000万ドル調達と宇宙データセンター構想を取り上げた。当時11億ドルだった評価額は、約5カ月で23億ドルへ上昇した。今回は資金だけでなく、軌道上での計算実績とNVIDIAの出資が加わった点が前回との違いである。

調達資金は、ワシントン州ウッディンビルに開設する約10万平方フィートの製造拠点、次世代衛星「Starcloud-3」の生産設備、エンジニア採用、将来の打ち上げ枠の確保に充てる。NVIDIAとは宇宙向け計算モジュールを共同で検証し、Ciscoとは安全なデータセンター基盤に関する知見を取り込む方針である。

太陽光発電と放射冷却で成り立つ軌道上AI処理

同社の技術は、地上からデータを送って結果を受け取るAI計算設備を、人工衛星として軌道上へ置くものである。昼夜の境界付近を飛ぶ太陽同期軌道では、太陽光を長時間受けられる。同社は95%を超える設備利用率を想定しているが、これは将来システムの設計値であり、商用規模での実績ではない。

宇宙空間では空気がないため、ファンや空調で熱を運べない。GPUの熱を液体冷却または液浸冷却で集め、大型ラジエーターから赤外線として放射する必要がある。同社のホワイトペーパーは、複数の冷却系統と展開式ラジエーターを組み合わせる構想を示す。冷却水を消費しない一方、巨大な放熱面の展開と保護が課題となる。

計算装置には、放射線、重量、消費電力への対策も求められる。NVIDIAが2026年3月に発表した「Space-1 Vera Rubin Module」は、宇宙向けに最適化した計算基盤であり、H100比で最大25倍のAI推論性能をうたう。同社は初期の搭載先として検証を進めるが、同モジュールの軌道上性能は今後確認される段階である。

次世代衛星の量産と宇宙向けGPUの実用化

同社は調達資金を使い、まず前立腺肥大症を対象とする臨床評価を進める。その後は、前立腺がんの病変だけを治療する局所療法へ広げ、長期的には生検や腫瘍位置の把握を含む診断用途も目指す。診断と治療を一つの装置で完結できるかが事業化の焦点となる。

CEOのAmir Tehrani氏は、十分な効果と副作用の少なさを両立する選択肢を患者へ届けたいと述べ、今回の資金で進行中の臨床評価を継続すると説明した。Olympus Innovation Ventures議長のGabriela Kaynor氏も、同じ場で前立腺を見て治療できる技術への需要を評価している。


参考文献:

※1:Starcloudによる資金調達の公式発表(リンク

※2:同社HP(リンク

※3:同社「Starcloud-1」(リンク

※4:同社ホワイトペーパー「Why we should train AI in space」(リンク

※5:NVIDIA「NVIDIA Launches Space Computing, Rocketing AI Into Orbit」(リンク

※6:当社メディアの過去記事(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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