循環式陸上養殖のOceanloopが最大3,850万ユーロの資金を確保 タマカイを欧州で量産へ
ドイツのOceanloopは、海水を施設内で循環させ、魚介類の生育環境を制御する陸上養殖システムを開発するフードテック企業である。水処理設備に生物学、ソフトウェア、運用ノウハウを組み合わせ、海面の養殖場に依存しない安定生産を目指す。
同社は2026年8月18日、最大3,850万ユーロの資金を確保したと発表した。Hatch BlueとStolt Venturesによる新規出資に、欧州投資銀行の3,200万ユーロの融資枠を組み合わせ、タマカイの生産拡大と養殖技術の商用展開に充てる。
年間20~30トンの実証施設から2,000トン規模への拡大
同社はドイツ北部キール近郊の施設で、同社によれば欧州初となるタマカイの陸上養殖を実現した。タマカイはハタ科の大型魚で、締まりのある白身と淡い甘みを持ち、アジアでは高級魚として扱われる。2026年4月には関連会社Honest Catchを通じて販売を開始しており、現在の生産能力は年間20~30トンである。研究開発だけでなく、実際に育てた魚を飲食店や消費者へ届ける段階まで進んでいる。
次の計画は、既存施設に年間250トンの養殖設備を増設し、技術を商用規模で検証することである。その後はスペイン・グランカナリア島に年間2,000トンの施設を建設する。魚の生育管理から加工、品質管理までを一体化し、別の地域でも再現できる養殖モデルの確立を狙う。
資金の内訳には注意が必要である。3,850万ユーロの全額が今回の新規株式調達ではなく、2024年に契約され、2026年7月にタマカイ養殖を対象へ加えた欧州投資銀行の融資枠を含む。新たな株式出資額は非公表であり、今回の発表は商用化に必要な資金基盤を整えたものと捉えるのが適切である。
水を循環させながら生育環境を制御する陸上養殖
同社の技術は、飼育水を処理して繰り返し使う循環式陸上養殖システム(RAS)である。海面養殖と異なり、施設内で水質や水温などを調整できるため、天候や海況の影響を抑えながら通年生産を行える。排水や外部環境との接触を管理しやすい点も特徴となる。
養殖槽には、水を低い高低差で流すレースウェイ型の構造を採用する。水処理設備と飼育空間を一体化し、長い配管や多数の独立した円形水槽に依存しない構成である。生物学的な飼育条件と設備設計を合わせ、魚種や施設規模に応じてモジュールを展開する。
運用では、センサーによるデジタル監視とソフトウェアを使い、給餌、生育、動物福祉、エネルギー消費を継続的に改善する。欧州投資銀行の資料では、画像から魚介類の総重量やストレス状態を推定するコンピュータービジョンの研究も示された。魚を取り上げずに群れの状態を捉え、人の経験だけに頼らず、施設で得たデータを次の養殖計画へ反映する仕組みである。
250トン施設を足掛かりとする海外展開
同社は2026年末までにキールで新施設の建設を始め、商用運転データを将来の施設設計へ反映する。グランカナリア島の2,000トン施設は2029年の着工を予定しており、大型化しても水質、成長速度、コストを維持できるかが焦点となる。
創業者兼CEOのFabian Riedel氏は、今回の資金確保を実証技術から国際的な養殖基盤へ進むための産業化の出発点と位置付けた。共同創業者兼CTOのBert Wecker氏は、自社施設に加えて、ライセンスや合弁事業を通じて異なる魚種や地域へ展開する方針を示している。
日本企業による出資や提携は発表されていない。一方、同社はアジアの高級魚市場で流通するタマカイを主力魚種とし、出荷時には活け締めを採用する。日本でもNTT東日本と東京都がICTを使う閉鎖循環式陸上養殖を進めており、欧州で得られる量産データは比較材料となり得る。
参考文献:
※1:Oceanloop secures up to €38.5 million to scale its land-based aquaculture technology and Europe’s first farmed Giant Grouper(リンク)
※2:同社HP(リンク)
※3:European Investment Bank「OCEANLOOP SUSTAINABLE SHRIMP FARM」(リンク)
※4:NTT東日本「東京都とNTT東日本が漁協運営型陸上養殖プロジェクトに関わる基本協定を締結」(リンク)
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