前立腺の画像診断・超音波治療装置を開発するMaxQ Medicalが3,150万ドル調達 オリンパス系も出資
米国カリフォルニア州のMaxQ Medicalは、前立腺を尿道側から画像化し、同じ器具で超音波治療まで行う医療機器を開発する企業である。最初の対象は前立腺肥大症で、将来は前立腺がんの局所治療や診断への展開を計画する。
同社は2026年8月20日、シリーズAで3,150万ドルを調達した。Atlantic Blue Ventures、S3 Ventures、オリンパスの投資部門Olympus Innovation Venturesが共同主導した。資金は人員拡充と、進行中の臨床評価に充てる。
診断と治療を一つの器具で完結させる一体型設計
前立腺肥大症では、肥大した組織が尿道を圧迫し、排尿しにくくなる。治療には薬剤、蒸気やインプラントを使う低侵襲手術、組織を切除する手術などがある。切除は症状の改善を期待できる一方、出血や腫れ、排尿・性機能への影響が課題になり得る。
同社が目指すのは、画像で位置を確かめてから、必要な組織へ高密度焦点式超音波(HIFU)を照射する一連の操作である。器具を前立腺を通る尿道内へ入れるため、直腸など体外側から狙う方式に比べ、前立腺の内部を見ながら治療範囲を決められるとしている。尿道を温存し、外来で行える装置として開発中である。
共同主導したOlympus Innovation Venturesは、内視鏡技術を補完・拡張する医療機器や診断技術へ投資するオリンパスのCVCである。当社メディアでも以前、低出力パルス波超音波で認知症治療を目指すSound Wave Innovationを取り上げた。照射強度や対象疾患は異なるが、薬剤を使わず超音波を治療へ応用する医療機器という共通点がある。
半導体超音波素子による画像化と局所治療の切り替え
技術の中核は、半導体製造技術で作る微小な超音波素子「CMUT」である。薄い膜と電極を備えた素子に電圧を加えて膜を振動させ、超音波を送受信する。圧電材料を用いる従来型素子に対し、広い周波数帯を扱いやすく、多数の素子を並べた二次元アレイや電子回路との一体化に適する。
同じCMUTアレイを低出力で動かせば、反射波から前立腺内部の画像を作れる。出力を高めて一点へ集束させれば、狙った組織を加熱して処置するHIFUとして機能する。Stanford大学の研究チームは、二次元CMUTアレイで画像化とHIFUを切り替えられる駆動回路を報告しており、別々の画像装置と治療用振動子をまとめられる可能性を示した。
同社はこの基礎技術を、前立腺の観察、治療範囲の設定、超音波照射までを連続して行うシステムへ発展させている。自動化により医師の操作を支援する方針だが、画像処理や照射制御の詳細、臨床成績は未公表である。現時点では治験用機器であり、米国で市販されていない点にも留意が必要である。
臨床評価を進め、前立腺がんへ用途拡大
同社は調達資金を使い、まず前立腺肥大症を対象とする臨床評価を進める。その後は、前立腺がんの病変だけを治療する局所療法へ広げ、長期的には生検や腫瘍位置の把握を含む診断用途も目指す。診断と治療を一つの装置で完結できるかが事業化の焦点となる。
CEOのAmir Tehrani氏は、十分な効果と副作用の少なさを両立する選択肢を患者へ届けたいと述べ、今回の資金で進行中の臨床評価を継続すると説明した。Olympus Innovation Ventures議長のGabriela Kaynor氏も、同じ場で前立腺を見て治療できる技術への需要を評価している。
参考文献:
※1:MaxQ Medicalによる資金調達の公式発表(リンク)
※2:同社HP(リンク)
※3:Stanford University Khuri-Yakub Group「CMUTの技術概要」(リンク)
※4:Stanford University「画像化とHIFUを切り替える二次元CMUTアレイ」(リンク)
※5:米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所「前立腺肥大症」(リンク)
※6:Olympus Innovation Ventures(リンク)
※7:当社メディア「『超音波』でアルツハイマーを治療する日本発Sound Wave Innovationが26.5億円調達」(リンク)
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