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「超音波」でアルツハイマーを治療する日本発Sound Wave Innovationが26.5億円調達

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Sound Wave Innovationは、低出力パルス波超音波(LIPUS)を用いた低侵襲治療技術を開発する日本発の医療機器スタートアップ。主力パイプラインは、早期アルツハイマー病および軽度認知障害(MCI)向けの治療機器「LIPUS-Brain」。薬剤ではなく、頭部に装着するデバイスから超音波を照射し、脳の微小循環障害の改善を目指す。

同社は2026年5月、シリーズCラウンドで約26.5億円を調達した。引受先にはFiducia GrowthTech投資事業有限責任組合、住友重機械工業、iGlobe Partnersなどが含まれる。調達資金は主に、LIPUS-Brainの検証的治験の完遂に充てられる予定。同治験は医薬品開発のフェーズ3に相当し、実用化に向けた重要な段階となる。

薬剤中心の認知症治療に、超音波という非侵襲アプローチを持ち込む

Sound Wave Innovationの最大の特徴は、アルツハイマー病に対して、薬剤ではなく低出力パルス波超音波(LIPUS)という物理刺激でアプローチしている点にある。近年のアルツハイマー病治療では抗体医薬など薬剤開発が注目されているが、同社は体外から超音波を照射することで、脳の微小循環障害に働きかける非侵襲型の治療機器を開発している。

この技術は、単なる構想段階ではない。創業者である下川宏明氏らの研究グループは、早期アルツハイマー病患者を対象にLIPUS治療の探索的治験を実施し、安全性を確認するとともに、有効性を強く示唆する結果を得たとしている。試験は無作為化二重盲検プラセボ対照試験として行われ、結果は2022年にTohoku Journal of Experimental Medicineに掲載された。

同社の治療機器「LIPUS-Brain」は、2022年9月に厚生労働省の「先駆的医療機器指定制度」の対象品目として了承されている。今回のシリーズC調達は、この探索的治験の成果を踏まえ、検証的治験を完遂するための資金となる。日本発の医療機器スタートアップが、薬剤中心の認知症治療市場に対して、非侵襲・物理刺激型という新たな選択肢を提示できるかが注目される。

頭部への低出力超音波照射で、脳血流・血管機能の改善を狙う

同社の中核技術は、低出力パルス波超音波(LIPUS:Low-Intensity Pulsed Ultrasound)である。LIPUSは、診断用エコーのように体外から超音波を照射する技術だが、同社はこれを治療用途に応用している。主力機器「LIPUS-Brain」では、頭部に装着する発信機から低出力の超音波を脳に照射し、手術や麻酔を伴わない非侵襲的な治療を目指す。

作用機序として同社が着目するのは、脳の微小循環障害である。LIPUSによる物理刺激が血管内皮細胞に作用し、血管拡張に関わるeNOSや、血管新生に関わるVEGFの発現を促すことで、血流や血管機能の改善につながる可能性がある。アルツハイマー病を神経変性だけでなく、脳内の血管・循環機能の問題としても捉える点が特徴だ。

また、LIPUSは薬剤のように特定の分子標的を阻害・除去するのではなく、生体組織に機械的刺激を与えることで細胞応答を引き出すアプローチである。そのため、同社の技術はアルツハイマー病に限らず、重症狭心症や不整脈など循環器領域への展開も視野に入る。単一疾患向けの治療機器というより、超音波刺激を基盤とした治療プラットフォームとして位置づけられる。

住友重機械との連携を通じ、承認申請・医療機関導入へ進む

同社の当面の焦点は、早期アルツハイマー病および軽度認知障害(MCI)を対象とする「LIPUS-Brain」の検証的治験を完遂することにある。同社は2023年秋から、同機器の有効性を確認するための最終的な検証的治験を進めており、2026年中の完了を予定している。今回のシリーズC調達も、この治験完遂を主目的としたものだ。

検証的治験で有効性が確認された場合、次の焦点は医療機器としての承認申請と事業化に移る。リリースでは、2025年8月に資本業務提携した住友重機械工業が、認知症治療機器として製造販売承認申請を速やかに行う予定とされている。承認取得後は、全国の医療機関で治療を開始することを目指す。

中長期的には、LIPUSを認知症に限らない治療プラットフォームとして展開できるかも注目点となる。同社は重症狭心症や不整脈などへの応用も視野に入れており、LIPUS-Brainの実用化が進めば、日本発の非侵襲治療機器として適応拡大の可能性も広がる。


参考文献:

※1:サウンドウェーブイノベーション、認知症治療機器LIPUS-Brainの検証的治験完遂を目的としたシリーズCにおいて、26.5億円の資金調達を達成( リンク

※2:下川教授の早期アルツハイマー病に対する超音波治療の探索的治験の結果がTohoku Journal of Experimental Medicineにオンライン掲載されるとともに、東北大学からプレスリリースされました( リンク

※3:住友重機械工業株式会社とサウンドウェーブイノベーション株式会社による資本業務提携契約締結に関するお知らせ( リンク

※4:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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