EVやロボット用磁石の材料を製造するHertha Metalsが1.34億ドル調達 トヨタ系VCなど出資
米国テキサス州のHertha Metalsは、鉄鉱石から鉄を取り出して成分を調整するまでの工程を、一つの反応炉で行う製鉄技術を開発する企業である。一般的な鉄鋼製品に加え、電気自動車やロボットの強力な磁石に使う高純度鉄を製造する。
同社は2026年9月29日、シリーズAで1億3,365万ドルを調達した。Khosla VenturesとDoerr Capitalが共同主導し、米政府による6,500万ドルの出資も含む。Toyota VenturesとNiterra(日本特殊陶業)系ファンドも参加した。資金は年産1万トンの商用施設建設に充てる。
磁石材料の輸入依存を減らす米国内生産
電気自動車のモーターなどに使うネオジム磁石は、名称の通りネオジムなどの希土類元素を含む。一方、重量で見ると約70%は高純度鉄である。同社によると、米国はこの鉄をほぼ全量輸入している。磁石メーカーの国内生産を増やすには、希土類だけでなく高純度鉄の調達先も確保する必要がある。
建設予定の「Chalyx」は、高純度鉄と鉄鋼製品を年間1万トン生産する計画である。現在の実証設備は年産360トンであり、生産能力は約28倍になる。同社は米国の主要な磁石メーカーと、製品が要求品質を満たすかを確認する材料認定を進めている。ただし、顧客名や供給契約の規模は明らかにしていない。
日本からはトヨタ系VCのToyota Venturesと、Niterra(日本特殊陶業)の「SUISO no MORI」ファンドが出資した。同ファンドはGlobal Brainが運営し、水素や炭素循環に関わる技術へ投資する。当社メディアでも以前、中国による原材料の輸出規制と日本の対応を取り上げた。同社の事業は希土類の採掘ではなく、磁石の大部分を占める高純度鉄の供給網を補うものである。日本での提携や生産計画は公表されていない。
鉄を取り出して成分を整えるまでを一工程に集約
一般的な高炉製鉄では、石炭から作るコークスを使い、鉄鉱石に含まれる酸素を取り除く。この反応を「還元」と呼ぶ。得られた銑鉄は別の設備へ移し、炭素や不純物を減らして目的の鋼に仕上げる。複数の大型設備が必要で、コークス由来の二酸化炭素も排出する。
独自技術「Flex-HERS」は、天然ガスまたは水素を利用したガスで鉄鉱石を還元し、そのまま同じ反応炉で溶かす。原料を順次投入しながら処理する半連続方式を採用し、炉内で炭素量などを調整することで、高純度鉄と用途別の鋼を作り分ける。低品位の鉱石や粉状の鉱石、鉄を含む廃棄物も原料にできるという。
工程をまとめることで、設備数とエネルギー消費を減らせる可能性がある。同社は、従来の高炉に比べて生産費を25%下げ、排出量を天然ガス使用時に50%、水素使用時には最大98%削減できるとしている。ただし、これらは同社の試算を含み、天然ガスを使えば二酸化炭素は残る。年産1万トンで同じ品質とコストを維持できるかが次の検証課題である。
年産1万トン施設で問われる品質とコスト
同社は2026年中にChalyxの建設へ着手し、実証設備で確立した製造条件を商用施設へ移す。磁石材料では微量の不純物が磁力や加工性へ影響する。生産量を約28倍に増やしても成分を安定させ、顧客の材料認定を得られるかが焦点となる。
創業者兼CEOのLaureen Meroueh氏は、電気自動車、航空宇宙、レーダー、データセンターには、米国内で生産した鉄と磁石材料が必要だと説明した。Khosla VenturesのRajesh Swaminathan氏も、同社の製鉄技術を、磁石やEV、データセンター、防衛産業の国内供給網を支える技術と評価する。
Toyota VenturesとNiterra系ファンドの参加により、日本の自動車・素材産業との接点も生まれた。ただし、材料の採用や共同開発は発表されていない。まずは米国施設を立ち上げ、輸入材に対する価格競争力と供給の安定性を示す必要がある。
参考文献:
※1:Hertha Metalsによる1億3,365万ドルのシリーズA調達発表(リンク)
※2:Hertha MetalsによるFlex-HERSの技術説明(リンク)
※3:Global BrainによるNiterra「SUISO no MORI」ファンドの説明(リンク)
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