AIデータセンターの消費電力を調整するEmerald AIが1.5億ドル調達 JERAも出資
米国のEmerald AIは、AIデータセンターの計算処理と消費電力を、電力網の状況に合わせて調整するソフトウェアを開発する企業である。電力需要が高まる時間帯には、急がないAI処理を遅らせたり、別の拠点へ移したりする。
同社は2026年8月25日、シリーズAで1億5,000万ドルを調達し、評価額は10億5,000万ドルとなった。Energize CapitalとDCVCが共同主導し、NVIDIA、JERA Ventures、丸の内イノベーションパートナーズなどが参加した。累計調達額は2億2,000万ドルを超える。
5カ所の実証からデータセンター全体への商用導入
同社は米国と英国の5カ所で実証を行い、AIの性能を保ちながら消費電力を短時間で下げられるかを検証してきた。現在は試験用の一部設備ではなく、カリフォルニア州にあるデータセンター全体を対象とした商用導入へ進んでいる。
アリゾナ州の実証では、Oracle Cloud上のNVIDIA A100を256基使う計算設備で、電力需要のピーク時に消費電力を3時間にわたり25%削減した。査読付き論文によれば、処理の締め切りなど事前に定めた品質条件は維持された。
当社メディアでも以前、世界のデータセンター投資動向と電力接続の課題を取り上げた。JERAは同社のソフトウェアと、発電、再生可能エネルギー、蓄電池、電力需給運用の知見を組み合わせ、日本を含む国内外で新たな事業を検討する。
急がない計算を移動・調整する電力制御
AIデータセンターで動く処理には、利用者への回答のようにすぐ終える必要があるものと、モデルの追加学習やデータ処理のように実行時刻をずらせるものがある。同社のソフトウェアは処理期限や優先度を確認し、電力網が逼迫した際に後者の開始を遅らせる。
通信の遅れが許容範囲に収まる場合は、計算処理を電力に余裕がある地域のデータセンターへ移す。施設に蓄電池や自家発電設備があれば、それらの運転も計算処理とまとめて制御する。重要な処理は継続しながら、施設全体の消費電力を下げる仕組みである。
実際に削減した電力は、データセンター側の計測値と電力会社からの要請を突き合わせて確認する。ただし、処理を別地域へ移す際の通信量やデータ管理、異なるAIサービスでも品質を保てるかは、商用規模での継続検証が必要となる。
JERAとの共同検討と96MW施設への展開
同社は2026年後半、バージニア州で約96MWのAIデータセンターに技術を導入する計画である。Digital RealtyやNVIDIAなどと連携し、施設全体の電力需要を調整する。JERAとも、電力と計算能力を組み合わせたサービスを日本および海外で検討する。
創業者兼CEOのVarun Sivaram氏は、AIの成長を制約する電力問題に対し、実証で得た成果を世界規模へ広げると説明した。JERA Venturesの児玉武志氏も、同社のソフトウェアとJERAのエネルギー事業の知見を組み合わせる可能性を評価している。
参考文献:
※1:Emerald AIによる資金調達の公式発表(リンク)
※2:同社HP(リンク)
※3:JERAによるEmerald AIへの出資発表(リンク)
※4:AIデータセンターの電力調整に関する査読付き論文(Nature Energy)(リンク)
※5:同社による5カ所の実証結果(リンク)
※6:同社による商用規模の導入計画(リンク)
※7:同社による投資家コメント(リンク)
※8:当社メディア「世界のデータセンター投資動向」(リンク)
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