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コメで牛乳タンパク質を作る技術を開発するKinishが4.9億円調達 島津製作所系と大林組も出資

コメを使った代替乳製品を開発するKinishは2026年10月20日、シリーズAの初回調達として4.9億円を確保したと発表した。同社は米由来の植物性アイスを販売するとともに、牛乳タンパク質を含むコメと、その栽培技術を研究開発している。

調達は第三者割当増資によるもので、島津製作所のCVCファンド、大林組、INSPiRE Mutualistic Symbiosis Fund 1、カナダのLove Veggies Holdingが出資した。資金は日米での販売拡大、植物工場・植物分子農業の研究開発、採用に充てる。

食品販売と研究開発をつなぐ事業会社との連携

同社の事業は、食品の販売と新しい原料の開発を並行して進める構成である。まず一般的な国産米を使ったアイスでブランドと販路を築き、将来、研究成果を取り入れた商品へ広げる。販売中の商品には、開発中の牛乳タンパク質を含むコメは使っていない。技術の完成を待つ間にも市場との接点を持つという事業設計である。

今回の出資では、研究を製品へつなぐ分析・計測の支援も具体化した。島津製作所の発表では、原料・製品・栽培環境の分析評価、品質管理手法の高度化、植物工場での計測技術活用における協業を掲げている。食品としての品質と栽培条件を評価する体制を整える点で、資金供給にとどまらない接点である。

当社メディアでも以前、藻類を食品素材へ加工するEdoniaを取り上げた。新しいタンパク質源を食生活に広げるには、成分だけでなく、食感や使いやすさ、継続して購入できる商品設計が重要になる。同社の場合も、原料の研究と消費者向けの商品展開をどう結び付けるかが、技術の普及を考えるうえでの注目点となる。

イネによるタンパク質生産と小型品種の多段栽培

技術の中核は、植物が成長する過程で目的のタンパク質を作らせる「植物分子農業」である。同社は牛乳タンパク質の一種であるカゼインをイネに作らせ、乳製品に近い食べ応えを持つ食品への利用を目指す。グローバル・ブレインの出資発表では、植物工場に適した小型イネへのタンパク質の発現と、食品への応用を一体で進める構想を説明している。

生産面では、草丈約20cmの小型イネを用い、棚を重ねる多段式の栽培に適した植物工場を開発する。植物そのものの小ささを利用して、限られた空間で栽培する方式である。同社は実証実験で、3か月に1平方メートル当たり約2.08kgの玄米を収穫したと公表した。ただし、この数値は玄米の収量であり、カゼインの生産量や商業規模での採算を示すものではない。

食品への応用では、コメのデンプンから得られる甘味と牛乳タンパク質を組み合わせ、アイスのクリーミーさや代替チーズの食感を実現する構想を示している。原料を作る品種開発、安定供給を支える栽培、味や食感を整える食品加工を組み合わせる点が特徴である。カゼインの発現には研究段階で成功しており、含有量を高める改良を進める方針である。

日米の販路拡大とタンパク質の生産性向上

同社はニューヨークに拠点を設け、米国での現地生産と取扱店舗の拡大を進める。一方、研究開発ではカゼイン含有量の向上と、植物工場での量産に向けた栽培方式の具体化を目指す。食品販売の拡大と、生産技術の改良を並行して進める段階である。

橋詰寛也CEOは2025年のICC登壇で、一般的なコメの商品を先に販売し、研究開発の成果を次の商品へ取り入れる二段階の方針を説明した。この方針を実現するには、タンパク質を作れることに加え、必要な量と品質を安定して確保する必要がある。今回の分析・計測面の連携は、その検証を支える取り組みと位置付けられる。


参考文献:

※1:Kinishによる4.9億円のシリーズA初回調達発表(2026年10月20日)(リンク)

※2:島津製作所による出資および分析・計測分野での協業方針の発表(2026年10月20日)(リンク)

※3:グローバル・ブレインによる出資と植物分子農業技術の説明(2026年10月20日)(リンク)

※4:Kinishによる小型イネ・植物工場・食品開発の技術紹介(リンク)

※5:ICC KYOTO 2025における橋詰寛也CEOの事業説明(2025年10月15日公開)(リンク)


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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