微生物の働きで化学肥料への依存を減らすBioConsortiaが1,500万ドル調達
米国カリフォルニア州デービスに拠点を置くBioConsortiaは、微生物を利用して作物の生育や病害防除を支える農業資材を開発している。同社は2026年10月9日、1,500万ドルの株式資金調達を発表した。
出資元は、既存投資家Otter Capitalの運営責任者John Pasquesi氏の関連事業体である。資金は、窒素固定を担う種子処理製品「Always N」と生育促進資材「Zaffre」の商業展開、製造・規制対応・販売体制の強化に充てる。ラウンド名と企業評価額は公表されていない。
種子処理に組み込む微生物製品と日本農薬グループとの接点
同社の事業で注目されるのは、微生物を農作業の流れに組み込む製品設計である。Always Nは種子に処理して使用し、播種後の根の周辺で窒素を供給する。同社によると、製品の保存期間は2年超で、処理後の種子上でもさらに2年間の生存性を持つ。工業的な種子処理に対応できる保存性は、流通・保管を経て農家へ届けるうえで重要な条件となる。
当社メディアでも以前、Ginkgo Bioworksの記事で、微生物による窒素固定と肥料の代替を取り上げた。同社は種子処理という形で、この市場の商業化を進めている。ただし、今回の発表は化学肥料の全面的な代替を示すものではなく、農地ごとの削減可能量も示していない。
日本企業との接点もある。同社は2023年、日本農薬の米国子会社Nichino Americaと、微生物殺菌剤「BEC-60」を米国・カナダで販売するための供給契約を締結した。これは作物の病害防除に関する提携であり、Always Nの販売契約とは異なる。今回の出資者として日本企業は記載されていない。
植物の生育を指標に選び出す窒素固定微生物
窒素固定とは、空気中の窒素を植物が利用できる形へ変える働きである。同社の技術は、この能力を持つ微生物を種子に施し、発芽後の根との関係を早期に形成させる。微生物が根の周辺で窒素を供給することで、生育期間中の養分確保を補助する仕組みである。同社は、肥料が存在する環境でも窒素供給が働くと説明している。
開発は、土壌から集めた微生物と生きた植物を使う選抜から始まる。窒素不足などの負荷をかけた条件で、微生物の接種と植物の栽培を繰り返し、生存や生育を継続的に支える微生物を残す。培養容器内での性質だけでなく、植物と組み合わせた際の働きを選抜基準とする点が特徴である。
さらに、ゲノム解析や微生物の性質、植物での試験結果を照合し、遺伝子と機能の関係を調べる。市場の規制に応じ、自然由来の菌株をそのまま用いる製品と、遺伝子編集で特性を高める製品を開発する。窒素固定能力に加えて、植物との相性や保存安定性を整えることが、農業資材としての実用化を支える。
製造・販売体制の拡充と農地での効果の再現性
CEOのMarcus Meadows-Smith氏は、今回の資金によって製造、規制対応、販売の能力を整備し、商業展開を加速する考えを示した。Always Nはニュージーランドなどで展開が進む一方、Zaffreは発売に向けた準備段階にあり、製品ごとに事業化の進み方は異なる。
同社は米州で肥料大手Mosaicと提携するなど、販売経路の拡大を進めている。事業拡大の鍵となるのは、作物や土壌、気候が異なる条件でも効果を再現し、農家にとっての費用対効果を示すことである。窒素肥料の削減量と収量を併せて検証することが、継続利用を広げるうえで重要となる。
参考文献:
※1:BioConsortiaによる1,500万ドルの株式資金調達発表、2026年10月9日(リンク)
※2:BioConsortiaの窒素固定・微生物肥料技術(リンク)
※3:植物の生育を指標とした微生物選抜技術「AMS」(リンク)
※4:微生物の遺伝子解析・改良技術「GenePro」(リンク)
※5:Nichino Americaによる微生物殺菌剤の供給契約発表、2023年6月20日(リンク)
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