手術に合わせてアームの配置を変えられるロボットを開発するCMR Surgicalに約4億ドル出資へ
英国ケンブリッジに本社を置くCMR Surgicalは2026年10月12日、米医療機器大手Strykerによる約4億ドル(約3億ポンド)の出資と戦略提携を発表した。同社は2014年設立で、小さな切開部から器具を入れて手術する低侵襲手術を支援するロボットを開発している。
今回の出資は優先株式によるもので、実行には規制当局の承認などの条件がある。資金は技術開発と世界各地での事業拡大に充てる。Strykerは米国での独占販売代理店となり、契約条件に基づいて将来、同社の全株式を取得できる独占的な権利も得る。
既存の手術室に合わせて配置できる分離型ロボット
同社の特徴は、手術台の周囲に置くアームを独立したユニットとし、患者や手術に合わせて配置を変えられることである。専用の手術室を固定的に確保する必要がなく、装置を別の部屋へ移して利用できる。病院側は既存の手術室を使いながら、ロボットを使う手術と通常の手術を切り替える運用を組みやすくなる。
当社メディアでも以前、微細な血管やリンパ管の縫合を支援するMMIを取り上げた。今回の「Versius Plus」は、内視鏡を用いた低侵襲手術の器具操作を支援するシステムである。アームの配置や器具を挿入する位置の自由度を確保し、手術室の広さや術者の手技に対応する設計に特徴がある。
今回の提携では、この装置にStrykerの医療機関との取引基盤と販売体制を組み合わせる。一方、米国で認められた用途は、対象条件を満たす22歳以上の患者に対する胆嚢摘出術である。2025年12月にFDAの510(k)クリアランスを取得したが、海外での多様な使用実績が、そのまま米国での適応範囲を意味するわけではない。
術者の操作を器具へ伝える制御と蛍光による術野の可視化
技術の中心は、外科医が操作卓から入力した動きを、患者側の内視鏡や手術器具へ伝える電気機械式の制御である。内視鏡用アームと器具用アームを分け、把持、切開、縫合などの操作を支援する。操作卓には内視鏡の3D映像を表示し、術者は体内の位置関係を確認しながら器具を動かす。手術の判断と操作を担うのは外科医である。
第2世代では、通常の内視鏡映像に加え、近赤外の蛍光画像を利用する機能を備えた。蛍光色素のインドシアニングリーン(ICG)を可視化し、対応する用途で術中の観察情報を補う仕組みである。蛍光像を重ねて表示する機能もあり、通常の映像と追加の視覚情報を組み合わせて確認できる。適用は各地域の承認範囲に従う。
操作卓は開放型で、患者側のスタッフにも2Dまたは3Dの内視鏡映像を共有する構成である。術者が手術チームと意思疎通しながら操作できるよう配慮している。日本企業との接点として、米国向けの製品構成にはEIZOの手術室向け映像関連製品「CuratOR」が含まれることが、同社の公式資料で確認できる。
米国販売網の拡充と導入後の品質管理
CEOのMassimiliano Colella氏は、今回の投資によって技術革新と世界展開を加速でき、Strykerの規模や顧客との関係が米国での成長機会につながると述べている。米国外での販売と製品開発は同社が引き続き担い、米国では提携先の販売網を活用する方針である。
導入拡大には、製品供給とともに品質管理も欠かせない。FDAは2026年7月、製造時に不正なソフトの起動を防ぐ設定が有効化されていなかった米国向け操作卓2台について、是正措置を公表した。同社側が設定を修正する対応で、10月16日更新の記録では未終結となっている。装置全体の販売停止を示すものではなく、対象機器を特定した対応として区別する必要がある。
参考文献:
※1:CMR SurgicalとStrykerによる約4億ドルの出資・戦略提携発表(2026年10月12日)(リンク)
※2:CMR Surgicalの米国向け公式製品情報。配置の自由度、用途、EIZO製品を含む構成の説明(リンク)
※3:FDAによるVersius Plusの510(k)資料。適応範囲とシステム構成の説明(リンク)
※4:CMR Surgicalによる近赤外蛍光イメージングと3D映像の公式技術説明(リンク)
※5:FDAによる特定の米国向け操作卓2台の是正措置記録(リンク)
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