インフラ点検用の水素飛行船を開発するHyLightが1,300万ユーロ調達
フランスのHyLightは2026年10月12日、1,300万ユーロの資金調達を発表した。2022年設立の同社は、水素燃料電池で駆動する無人飛行船を開発し、送配電線や鉄道、ガス管などの点検サービスを提供している。
出資にはRubio Impact Ventures、DRW、Teampact Venturesが参加し、既存投資家のY CombinatorとRing Capitalも加わった。調達資金は機体の生産拡大、運用機数の増加、点検データの解析自動化などに充てる。
ヘリコプターによる巡視を代替する長時間・低速飛行
送配電線やパイプラインの点検では、長い区間を移動しながら、部材の損傷や周囲の変化を詳しく確認する必要がある。同社が狙うのは、こうした広域巡視と近距離での観察を一つの飛行で行う用途である。長時間飛行に加え、低速移動や空中での停止が可能な飛行船を使い、設備ごとに必要な情報を収集する。
特徴は、機体の開発から製造、飛行運用までを自社で担う点にある。顧客に渡すのは撮影画像だけではなく、異常の位置を示した点検結果である。電力設備では電線や絶縁部材の異常、設備へ接近する樹木を調べ、ガス管ではメタン漏れを検知する。現場の保守担当者が対応すべき場所を把握するところまでをサービスに組み込んでいる。
すでにフランス北部では、配電事業者Enedisと電力線の点検を実施している。同社は点検対象に応じてセンサーを載せ替えられる構成を採用し、ガス輸送事業者NaTranなどとも運用を進めてきた。機体そのものの販売にとどまらず、設備の種類に合わせた計測と運用を提供する点が、事業としての重要な特徴である。
浮力と推力制御を組み合わせた安定飛行と複合計測
技術の中心は、空中にとどまる飛行船の特性と、水素燃料電池による電動推進の組み合わせである。浮力で機体を支え、推進装置で移動方向や姿勢を調整する。水素は燃料電池で電気を生み出すために使い、その電力で推進装置を動かす。同社は最大10時間の連続飛行を掲げており、長い設備区間を点検するための滞空時間を確保する設計である。
機体の前後には、推力の方向を変えられる独自の推進機構を配置する。これにより低速で進む、停止する、観察しやすい位置へ動くといった操作が可能になる。共同創業者による技術説明でも、点検途中で機体を止め、追加情報を取得できることが挙げられている。長距離を飛ぶ能力と、一つの設備を詳しく見るための機動性を両立させる仕組みである。
計測には、最大10kgのセンサーを搭載できる。カメラで外観を撮影し、レーザーで距離や形状を測るLiDARで設備や周辺の三次元形状を捉え、ガス検知器で漏れを調べる。取得した情報はAIによる異常検出と位置情報付きの報告に用いる。画像、形状、ガスという異なる情報を組み合わせ、目視だけでは捉えにくい状態も確認する構成である。
2027年の15機運用に向けた生産・サービス体制の拡張
同社は現在の4機から、2027年には最大15機を同時運用する計画である。ドイツとオランダを重点市場として欧州展開を進める。共同創業者兼CEOのMartin Bocken氏は、今回の調達を通じ、4機の運用から本格的な機体群によるサービスへ拡大する考えを示した。
事業拡大では、機体の増産に加え、各地域で点検を継続できる運用体制が重要になると考えられる。顧客ごとに異なる設備や計測条件へ対応し、取得したデータを保守作業に使える形で提供し続けられるかが焦点となる。飛行性能と点検サービスの品質を一体で高めることが、導入拡大を左右しそうである。
参考文献:
※1:HyLightによる1,300万ユーロの資金調達発表(2026年10月12日、企業発行リリース)(リンク)
※2:HyLight公式サイトの機体・センサー構成と用途の説明(リンク)
※3:HyLightによる飛行性能・点検工程・用途の説明(リンク)
※4:共同創業者Thomas Laporte氏による推進機構・センサー統合・運用実績の説明(2025年4月24日、公式サイトからリンク)(リンク)
※5:投資家Earth VCによるEnedisとの電力線点検の紹介と動画(リンク)
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