皮膚上で生化学マーカーを連続計測する「Lab-on-Skin」のXsensioがシリーズAで700万ドルを調達、Texas Instrumentsと量産化で協業
スイス・ローザンヌの生体センシング企業Xsensioは2026年3月、700万ドルのシリーズAラウンドの完了を発表した。募集額を上回る応募が集まり、WI Harper、Privilège Ventures、欧州イノベーション会議等が投資家として参加した。
同社は皮膚上で複数の生化学マーカーをリアルタイムに連続計測するウェアラブルチップ「Lab-on-Skin」を開発しており、調達資金は臨床検証の加速と量産体制の構築に充てる。
ウェアラブルの空白地帯――簡単ではない生化学バイオマーカーの連続センシング
心拍数や血中酸素濃度といった物理バイタルの連続モニタリングはスマートウォッチ等で広く実用化された。生化学マーカーでも、間質液中のグルコースを計測するCGM(過去記事参照)やマイクロニードル型デバイス、汗中乳酸を計測するスポーツ用センサが登場しているが、いずれも単一バイオマーカーに特化している。
複数の生化学マーカーを同時かつ連続的に計測する技術は未だ実現しておらず、Xsensioはこの未開拓領域に半導体製造プロセスで切り込もうとしている。
CMOS技術で実現する皮膚上のマルチバイオマーカー計測
XsensioはEPFLのナノエレクトロニクス研究所Nanolabの技術を基盤とするスイス発のスタートアップである。2021年にはEPFLと共同で、汗中のストレスホルモンであるコルチゾールを検出するウェアラブルチップを発表している(過去記事参照)。
グラフェン電極上にコルチゾールと結合する短鎖DNAを固定化し汗中濃度を連続計測する仕組みである。EPFLの発表によれば、一日の生体リズム全体を通じてコルチゾール濃度を連続モニタリングできるシステムは当時他に存在しなかった。
そこから今回のシリーズAまでに5年を要したことになる。2021年時点では単一のコルチゾールセンサであったが、現在のLab-on-Skinは複数の生化学マーカーを同時に扱うプラットフォームへと進化しており、この間に技術的な進化があったことがうかがえる。
現在のLab-on-Skinは、半導体の標準製造プロセスであるCMOS技術で超小型チップ上に複数のバイオセンサを集積し、複数の生化学マーカーを一つのプラットフォームでリアルタイムかつ連続的に計測する。
臨床現場への実装とTexas Instrumentsとの協業が示す量産への道筋
Xsensioは本ラウンドと同時に、半導体大手Texas Instrumentsとの長期協業を発表した。CMOS集積化と超小型化、大量生産技術の専門知識を取り込み、Lab-on-Skinの産業スケーラビリティを強化する。
臨床応用ではICUでの臓器機能障害の早期検知や術後回復モニタリングを想定し、Mayo ClinicのAyan Sen氏が医学アドバイザーに就任している。CEOのEsmeralda Megally氏は「臨床医が主要な生化学データにリアルタイムで連続的にアクセスできるのは初めてである」と述べている。
2025年にはTIME誌「世界のトップヘルステック企業」にも選出された。TIとの量産協業とMayo Clinicとの臨床連携を得て、研究室発の技術を臨床・量産に橋渡しする新たなフェーズに入った。
参考文献:
※1: EPFL Nanolab コルチゾール連続計測研究発表(リンク)
※2: Xsensio プレスリリース シリーズA資金調達発表(リンク)
※3: Xsensio 公式ウェブサイト(リンク)
※4: Xsensio 公式ウェブサイト About Us / チーム情報(リンク)
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