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Physical AI基盤「Cortex」を開発するSereact、1.1億ドル調達

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Sereactは、ドイツ・シュトゥットガルト発のロボティクスAI企業である。倉庫や製造現場で稼働するロボット向けに、認識・判断・動作を担うAIモデル「Cortex」を開発している。同社の技術は、単腕ピッキングセル、双腕返品処理、ヒューマノイド、在庫・品質管理向けの3D認識システムなどに横断的に適用される。すでにグローバル大手であるBMW、Mercedes-Benz、Daimler Truckなどを顧客に持つ。

同社は2026年4月、Headlineが主導するSeries Bで1億1,000万ドルを調達したと発表した。Bullhound Capital、Daphni、Felix Capitalが新たに参加し、既存投資家のAir Street Capital、Creandum、Point Nineも継続出資した。調達資金は、次世代ロボットAI「Cortex 2.0」の拡張と米国市場進出に充てられ、同社はボストンに初の米国拠点を開設する。

Sereactが狙うのは、ロボットを動かすAIレイヤー

同社の特徴は、ロボット本体ではなく、複数のハードウェアに横断的に載る「ロボットの頭脳」を開発している点にある。同社のAIモデル「Cortex」は、単腕ロボット、双腕ロボット、ヒューマノイド、固定セルなどに適用でき、対象物の認識、状況判断、動作計画までを担う。つまり同社は、特定のロボットを売るのではなく、既存・将来のロボットを自律的に動かすAIレイヤーを狙っている。

競合には、倉庫向けロボットAIを展開するCovariant、ピースピッキング領域のRightHand Robotics、欧州の倉庫ロボティクス企業Nomagic、物流自動化のDexterityなどがある。ただし同社は、特定のロボットシステムや用途に閉じるのではなく、単腕・双腕・ヒューマノイド・固定セルに横断展開できるモデルを前面に出している。ここに、単なる倉庫ロボット企業とは異なる位置づけがある。

さらに同社は、欧州の実運用現場で200台以上のシステムを稼働させ、10億回以上のピッキングデータを蓄積してきた。成功、失敗、リカバリー、ロボットの状態、グリッパーの力覚フィードバックなどをモデル改善へ戻すことで、導入が増えるほどAIが賢くなる学習ループを構築している。ロボティクスの競争軸が、ハードウェア単体から実世界データと汎用AIモデルへ移るなか、同社はその中核レイヤーを狙う企業といえる。

「見て動く」から「予測して動く」ロボットAIへ

同社の中核技術は、ロボット向けAIモデル「Cortex」である。今回の調達で開発を加速する次世代版「Cortex 2.0」は、ロボットが目の前の物体を認識して動くだけでなく、動作の前に複数の結果を予測し、最も安定した行動を選ぶ点に特徴がある。同社はこれを、「試してから見る」から「計画してから試す」アプローチへの転換と位置づけている。

技術的には、Cortex 2.0はVision-Language-Actionモデルにワールドモデルを組み合わせている。現在の状態から複数の将来軌道を生成し、それぞれを物体の挙動や物理的安定性に照らして評価する。そのうえで、リスクや効率を踏まえて最適な動作を選び、周囲の状況が変われば計画を更新する。これにより、単純なピッキングにとどまらず、部品配置やキッティングなど精度が求められる作業への展開を狙う。

もう一つの特徴は、特定のロボット構造に依存しにくい設計である。同社は、関節コマンドではなく視覚的な潜在空間で計画することで、単腕ロボット、双腕ロボット、ヒューマノイド、固定セルなど異なる形態にCortexを横断展開できるとしている。さらに、実運用で得た成功・失敗・リカバリーのデータをモデル改善に戻すことで、導入が増えるほどAIが賢くなる学習ループを構築している。

実運用データを武器に、米国市場へ拡大

同社の今後の方針は、次世代ロボットAI「Cortex 2.0」の拡張と、米国市場への進出にある。今回の調達資金を用いて、動作前に複数の結果を予測し、安定性・リスク・効率を評価してから行動を選ぶCortex 2.0の開発を進める。また、ボストンに初の米国拠点を開設し、商業・アプリケーション・エンジニアリング人材の採用も進める。

CEO兼共同創業者のRalf Gulde氏は、真に使えるロボティクスAIは研究室ではなく、実運用から生まれると強調している。同社は欧州で200台以上のシステムを稼働させ、10億回以上の実ピッキングを蓄積してきた。CTO兼共同創業者のMarc Tuscher氏も、同社が提供するのはロボットやサービスではなく、「どんなロボットでも動かすモデル」だと説明する。


参考文献:

※1:Sereact Raises $110M Series B( リンク

※2:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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