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腹圧性尿失禁(SUI)のスマートデバイスを開発するUroMemsが6000万ドルを調達

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UroMemsは、腹圧性尿失禁(SUI)を対象に、埋め込み型メカトロニクス医療機器を開発するメドテック企業。主力製品のUroActiveは、尿道周囲に設置するスマート自動人工尿道括約筋で、患者の活動状態に応じて制御され、手動調整の負担を減らすことを目指す。SUIは米国で約4,000万人、欧州で約9,000万人に影響するとされ、生活の質の低下や社会的負担も大きい。

同社は2026年5月、米国のAjax Health Fund Iから6,000万ドルの戦略投資を調達した。今回のラウンドは同社最大の資金調達で、Ajax Healthが全額を拠出する。資金は米国・フランス21施設で進むUroActiveのSOPHIA2ピボタル試験完了と、米欧での規制申請・商業化準備に充てられる。

尿失禁治療への新たなアプローチ

今回のポイントは、UroMemsが尿失禁治療を「手動操作を前提とした機械式インプラント」から、患者の活動状態に応じて動作する「自動制御型スマートインプラント」へ移行させようとしている点にある。

腹圧性尿失禁向けの人工尿道括約筋では、Boston ScientificのAMS 800が長年の標準治療として使われてきた。同製品は累計25万件以上が販売され、前立腺手術後の中等度から重度の男性腹圧性尿失禁に対するゴールドスタンダードとされる。人工尿道括約筋市場でも、AMS 800は2022年時点で売上シェアの85.25%を占めたとされ、競争環境は特定製品に大きく依存してきた。

一方で、既存の人工尿道括約筋には課題も残る。AUA/GURS/SUFUのガイドラインでは、人工尿道括約筋は時間とともに有効性が低下し、再手術が一般的であることを患者に説明すべきだとされている。関連研究でも、修正手術率は8〜45%、摘出率は7〜17%と報告され、機械的故障、尿道萎縮、感染、びらんなどが主な要因とされる。

UroActiveの狙いは、この弱点に対し、素材改良ではなく制御方式そのものを変えることにある。同デバイスは尿道周囲に設置され、患者の活動状態に応じて自動制御される。活動時には尿道圧を高めて尿漏れを抑え、圧迫が不要な場面では組織への負荷を緩めることで、使いやすさと組織ダメージ低減の両立を目指す。

つまり、同社の本質は、単に新しい尿失禁治療デバイスを出すことではない。これまで機械式が中心だった人工尿道括約筋に、センサーや電子制御を取り入れ、患者の状態に合わせて動く仕組みに変えようとしている点にある。

身体活動を読み取り、尿道圧を自動調整する制御システム

UroActiveの中核にあるのは、同社がMyoElectroMechanical Systemと呼ぶ技術である。これは、患者の身体活動に応じて、電子制御と機械動作を組み合わせる人工尿道括約筋システムである。デバイスは尿道の周囲に配置され、活動状態に合わせて尿道圧を調整する設計となっている。

技術的には、センシング、制御アルゴリズム、アクチュエーションの3要素で成り立つ。まず、インプラント内部のマイクロセンサーが患者の活動をリアルタイムで測定する。これにより、常に一定の力で尿道を圧迫するのではなく、その時々の状態に応じた制御が可能になる。

次に、デバイス内のアルゴリズムがセンサー情報をもとに、必要な尿道圧を判断する。その指示に基づき、機械機構が尿道への圧力を調整する。活動時には圧力を高めて尿漏れを抑え、圧迫が不要な場面では力を緩めることで、組織への負担低減を目指す。

さらに、UroActiveは患者インターフェースやリモートコントロールによる操作も想定している。排尿時の操作を直感的にし、患者が日常生活の中で扱いやすくすることも重視されている。つまり、UroActiveは単なる人工括約筋ではなく、体内で状態を読み取り、必要に応じて動くスマートインプラントとして設計されている。


臨床試験完了と規制申請に向け、商業化体制を強化 

今後の焦点は、UroActiveのSOPHIA2試験完了と、その結果に基づく規制申請である。今回の資金は、米国・フランスの21施設で進行中の同試験に充てられる。UroActiveは現時点でFDA承認を取得しておらず、米国・EUでは販売されていないため、臨床データの取得が次の前提となる。

同社CEOのHamid Lamraoui氏は、今回の資金調達により、UroActiveのPMA申請と商業化に向けた進展が可能になると説明している。同氏はまた、UroActiveがSUI患者に対する新たな治療選択肢となる可能性に言及しており、今後は臨床試験、規制対応、商業化準備が並行して進むとみられる。

投資家側では、Ajax HealthのDavid Beylik氏が、同社のメドテック領域での経験と資本をUroMemsの開発・商業化体制に組み合わせる方針を示している。既存投資家のBpifranceも、初期臨床試験の結果と医師からの関心を踏まえ、UroActiveの市場機会を評価している。

また、Ajax HealthのDavid Beylik氏とJeremy Durack医師がUroMemsの取締役会に加わる。これは、単なる資金提供にとどまらず、規制申請や市場投入を見据えた経営体制の強化と位置づけられる。UroMemsは今後、臨床データ、承認取得、商業化実行力の3点で評価される局面に入る。


参考文献:

※1:UroMems Raises $60 Million Strategic Investment from U.S.-Based Ajax Health Fund I( リンク

※2:AMS 800™ Artificial Urinary Sphincter( リンク

※3:Incontinence after Prostate Treatment: AUA/GURS/SUFU Guideline( リンク

※4:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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