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XR開発スタートアップのXPANCEOがシリーズAで361億円を調達。スマートコンタクトレンズの市場投入を目指す

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アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイのXRデバイス開発企業であるXPANCEOは2025年7月8日、シリーズA資金調達ラウンドでの$250m(約361億円)の確保を発表した。

XPANCEOは、XR体験が可能なスマートコンタクトレンズを開発中。2021年、起業家のRoman Axelrod氏とナノフォトニクス・先端材料分野の学者であるValentyn S. Volkov氏が設立した。

2025年4月にシンガポールの展示会でプロトタイプを出展

コンタクトレンズをXRデバイスとして採用した理由を、XPANCEOは次のように説明する。

まず重さを感じさせず、視野は無限(正確には人間の視野の限界とXRでの視野の限界が同じ)だ。スマートフォンなどのデバイスと異なり、アイコンタクトをしながら情報の享受ができる。これにより、人間同士の交流を改善できるとXPANCEOは主張する。

また、「持続不可能な材料の使用量を大幅に削減する」としており、材料にはリサイクルしたものなどの利用を目論んでいるようだ。

機能的には、夜間の視力の補強やズームについて触れており、目指している方向性のみでいえば、未来を感じさせるデバイスといえよう。

ウェブサイトには、「サブ0.5 mmプロジェクター付きディスプレイシステム」「高感度コンパクトIOPセンサー」「フレキシブル2D導体」といった関連プロダクトを掲載しており、開発が一定程度、進んでいることがうかがえる。

XPANCEOの2025年4月23日のブログには、シンガポールで開催された展示会「GITEX Asia」への出展について記している。2つのプロトタイプの公開が、ここでの大きなトピックとなったようだ。

そのうちの1つは、「ワイヤレス電力伝送における画期的な技術」「柔軟で軽量、かつ安全なフォームファクターを維持しながら、同サイズの既存ソリューションと比べて2倍の伝送距離を実現」と記しており、前出のフレキシブル2D導体と関連するものの可能性がある。

もう1つは、「内蔵のマイクロディスプレイとマイクロプロジェクションシステム」としており、スマートコンタクトレンズ上に情報を映す、同社プロダクトの中核になる部分と見られる。

2025年6月には、ドバイ大学とのパートナーシップを締結し、両者が共に施設を共有することを発表した。

「大手より5年先行している」と創業者

シリーズAは、LP投資を行うOpportunity Ventureが主導。資金を、プロダクトの市場投入に利用するとしている。

創業者のRoman Axelrod氏は、次のようにコメントした。

「大手企業が(XR)メガネやヘッドセットの開発を始めたのはつい最近のことなので、当社のスマートレンズ技術は少なくとも5年は先行している。

私たちのビジョンは変わらない。それは、すべてのデバイスを単一の目に見えないインターフェース、つまりあなたの目に統合することだ」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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