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女性用性感染症PCR検査キットを開発するVisby Medicalが79億円を資金調達。スタンフォード大医学部准教授が設立

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性感染症などの検査キットを開発する米Visby Medicalは2025年6月17日、およそ$55m(約79億円)の資金調達を発表した。

同社は2012年、スタンフォード大学医学部准教授のAdam de la Zerda氏が設立。シリコンバレーに本社を置く。なお、de la Zerda氏は2012年、スタンフォード大学医学部の終身在職権を史上最年少で取得している。

2013年より性感染症検査キット開発に注力

de la Zerda氏が起業したのは、誰でもどこでも使えるシンプルな診断ツールを求めたことによる。設立翌年の2013年には、性感染症の検査キットに注力するようになった。

Visby Medicalが採用する検査手法は、PCR検査。新型コロナウイルス(COVID-19)の流行で広く知られるようになったPCR検査は、正式な名をポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)検査という。検体のDNAもしくはRNAが、ウイルスに感染した際の遺伝子配列となっているかを調べる方法だ。

つまり、新型コロナウイルスに限らなくても、ウイルス感染によってDNAやRNAに変化を及ぼす感染症であれば、原理的にはPCR検査が可能となる。

Visby MedicalのPCR検査でターゲットとなる性感染症は、クラミジア、淋病、トリコモナス症の3種。新型コロナウイルスのPCR検査では、若干の時間がかかるため、人によっては不安感が増すことがあったが、同社のPCR検査は30分以内に結果を出せる。

Visby Medicalの性感染症PCR検査キット(同社プレスリリースより)

現状、開発が進んでいるのは女性向けの検査キットで、女性器から検体を採取するもの。しかし2025年5月には、男性の性感染症や性機能を尿検体から検査するキットにつき、米食品医薬品局(FDA)の510(k)申請をしたと発表している。FDAの510(k)は、既存の医療機器と同等の性能があると説明することで、承認プロセスの短縮が図れる承認制度である。

また、コアテクノロジーは性感染症のPCR検査であるものの、新型コロナウイルスやインフルエンザをターゲットとした呼吸器系感染症のPCR検査キットも開発する。

さらに$10mを確保する可能性も

2025年6月の資金調達は、ヘルスケアを専門分野とする投資会社が主導。また、ロサンゼルスの病院であるCedars Sinai Medical Centerや投資家のJohn Doerr氏が参加した。

なお、すでに確保できている資金は約$55mだが、さらに$10mを積み増し、今回の資金調達の総額が$65m(約94億円)になる可能性があると、Visby Medicalは説明している。

資金の使途について、de la Zerda CEOは「女性向けの性感染症在宅検査を皮切りに、消費者の皆様に自宅で快適に、信頼性が高く検査室レベルの精度を持つ健康情報を提供するという当社のビジョンを実現できる」と述べるにとどめた。

 



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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