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ドイツの核融合スタートアップ、Proxima FusionがシリーズAで214億円を調達。2031年の稼働開始目指す

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ドイツの核融合スタートアップであるProxima Fusionは2025年6月11日、シリーズA資金調達ラウンドでの€130m(約214億円)の確保を発表した。

同社は、Francesco Sciortino CEO、Lucio Milanese COO、Jorrit Lionチーフサイエンティスト、Martin Kubieチーフエンジニアによって2023年、設立。共同創業者の4人のうち、Sciortino氏とMilanese氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)でプラズマ物理学や核融合に関する博士号を取得した。

2025年2月に独自のステレーターを発表

核融合には、プラズマを使った「地場閉じ込め方式」とレーザーを使った「慣性閉じ込め方式」がある。Proxima Fusionは、共同創業者のSciortino氏やMilanese氏の学歴から分かるように、地場閉じ込め方式の開発を行う。

今回、巨額の調達を実現したProxima Fusionだが、必ずしもここまでは順調ではなかった。設立からの2年間で幾度にわたって資金調達を実施しているものの、シリーズAの前に最も大きな金額を調達できたのは2024年4月のシード資金調達ラウンドで、それでも€20m(約33億円。当時レート。以下、断りない限り同)に過ぎない。

他の核融合スタートアップの資金調達を見ると、Helion Energyは米国の大規模データセンター構想であるStargateの電源としての期待から、2025年2月、シリーズFで$425m(658億円)を調達した。しかし、Helion Energyは2021年のシリーズEでも$500m(約570億円)を調達していたことから、Stargate以前より注目を集めていたことが分かる。

参考記事:核融合発電の商用化を目指す米Helion EnergyがシリーズFで658億円を調達。投資家にはStargate関係者の名が並ぶ

では、ここにきてなぜProxima Fusionは、巨額の調達に成功したのか。

Sciortino氏は米TechCrunchの取材に、2025年2月に発表した査読付き論文を、要因の一つとして挙げる。この論文では、核融合発電所の稼働計画を記述。さらに、独自設計のステレーターについても明記した。

Proxima Fusionの企業紹介動画。ステーレーターの模型やCGも映る

このステレーターの考案は、従来、Proxima Fusionの既存投資家に説明していた半分の期間で達成できたという。そのため、投資家の信頼につながったということだ。

なお、ステレーターとはプラズマを閉じ込めるリング状の構造物で、地場閉じ込め方式の核融合で重要な部分である。

投資家は欧州企業が中心

シリーズAは、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。それ以外の投資家も含め、参加した多くは欧州のVCやプライベートエクイティー(PE)ファンドなどとなった。

調達した資金で、ステレーターモデルコイルを製造し、2027年の完成を目指す。また、2031年の核融合発電の稼働開始を目標に据える。

Sciortino CEOは、次のようにコメントした。

「核融合エネルギーは新たな時代を迎えている。実験室ベースの科学から産業規模のエンジニアリングへと移行している。今回の投資は私たちのアプローチを実証し、ハードウエアのためのリソースとなる」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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