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TRISO燃料製造の米Standard Nuclearが61億円を資金調達。2024年に破産した企業の資産を受け継ぎ、創業

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米核燃料製造スタートアップのStandard Nuclearは2025年6月11日、$42m(約61億円)の資金調達を発表。ステルス状態(存在を秘匿としたまま創業すること)を脱した。今回が、初めての資金調達と見られる。

Standard Nuclearは設立したばかりであるものの、破産した核燃料メーカーのUltra Safe Nuclear Corporation (USNC)の資産を引き継いでおり、またCEOのKurt Terrani氏はUSNCでは筆頭副社長だった人物であると、TechCrunchは報道。実質的に、USNCの後継会社といえよう。

USNC破産までの経緯とStandard Nuclearの現状

Standard Nuclearが製造するのは、TRISO燃料。核燃料を炭素系材料での多層コーティングし、安全性を高めたものだ。今後、開発や建設が進むといわれる小型モジュール炉(SMR)で利用されることが見込まれる。

Standard Nuclearが発表した核燃料と見られる写真(同社プレスリリースより)

これまでATXが報じた中では、X-EnergyがTRISO燃料のメーカーだ。

参考記事:SMR開発のX-EnergyがシリーズC1で約761億円を調達。TRISO-X燃料製造施設の建設を推進

ステルス状態から脱したStandard Nuclear だが、ウェブサイトにはほとんど情報を掲載しておらず、同じくサイトには所在地を「Secret City, USA」とし、一目では情報発信に消極的にも感じられる。

もっとも、今回の資金調達を広報するプレスリリースの発信場所は「テネシー州オークリッジ」としており、当地に生産施設を有していることを明かす。ここは、USNCのパイロット生産施設があった場所だ。

その前身となるUSNCは、Richard Hollis Helmsという米中央情報局(CIA)の元職員が実質的なオーナーだった。HelmsがUSNCを立ち上げた理由は明らかではない。2024年にHelmsが亡くなり、収益を生んでいないことが表面化。同年に破産宣告を受けたという経緯となっている。

話をStandard Nuclearに戻すと、資金調達後の2025年7月8日、核融合開発などを行うSHINE Technologiesと戦略的パートナーシップの締結を発表した。SHINEが現在、計画しているリサイクルした核燃料などを、Standard Nuclearに供給する。

「先進炉の不確実性を排除」とCEO

2025年6月の資金調達は、ベンチャーキャピタル(VC)が主導した。資金の使途は、明らかにしていない。

Terrani CEOは、Standard Nuclearについて次のように説明している。

「長らく待ち望まれ、これから市場に登場する先進炉のほとんどは、TRISO燃料の利点を活用している。これらの利点は、数十年にわたる米エネルギー省(DoE)と原子力規制委員会(NRC)の投資、科学的厳密さによって実証されてきた。

先進炉とはいえ、燃料なしでは稼働しない。私たちは、その供給における不確実性を確実に排除するためにここにいる。TRISO燃料を大規模に供給するだけでなく、堅牢で競争力があり、持続可能なコストで燃料を提供していく」

 



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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