xMEMS Labs、世界初の圧電MEMS冷却チップ技術で2,100万ドルを調達
MEMS Labsは米国カリフォルニア州サンタクララに拠点を置くMEMS技術企業で、圧電材料を用いたピエゾMEMS技術により、機械可動部を持たない固体スピーカーやマイクロ冷却デバイスを開発している。AI対応イヤホン、スマートグラス、ウェアラブルなどの小型・高性能化を支える中核技術として注目を集めている。
2025年10月、同社はBoardman Bay Capital Management主導のシリーズDラウンドで2100万ドルを調達。Cloudview Capital、CDIB-TEN Capital、Harbinger Venture Capital、SIG Asia Investmentsなどが参画した。資金は量産体制の強化、グローバル展開、次世代ピエゾMEMSの研究開発に活用される予定。
AI対応デバイスやウェアラブル機器では、処理性能の向上とともに発熱が増大し、限られた筐体内での熱処理と高音質の両立が大きな課題となっている。従来のコイルスピーカーやファンは可動部による振動・ノイズ・厚みが問題で、薄型・軽量化を求める設計要件に対応しにくい。さらに、電力効率と信頼性を両立させる製造技術の限界もあり、これが次世代デバイス開発のボトルネックとなっていた。
xMEMS Labsは圧電薄膜を用いたピエゾMEMS技術により、従来の機械的構造を排した固体型スピーカーとチップスケール冷却デバイスを開発。これにより、振動やノイズのない静音動作、薄型・軽量設計、低消費電力化を同時に実現した。さらに半導体プロセスを活用した一体成型により量産性と信頼性を高め、AI搭載機器の音響・熱設計課題を根本から解決する新たなプラットフォームを提供している。
圧電MEMSが実現する固体スピーカーとチップスケール冷却
xMEMSの中核技術であるピエゾMEMSは、圧電薄膜を用いた単一チップ構造のMEMSデバイスで、電圧を加えることで薄膜が微細に変形し、音や気流を生み出す仕組みを持つ。従来のコイルや磁気駆動構造を排除することで、可動部がなく高い信頼性と耐久性を確保。さらに半導体製造プロセスを活用することで、一貫した品質と高い量産性を実現している。
同社が開発する固体スピーカー「Sycamore」は、薄膜振動板の直接駆動によって高精度な音波を生成する。厚み1mm未満の超薄型ながら広い周波数帯域と高速応答を両立し、AIグラスやイヤホンなど限られた空間での高音質再生を可能にする。磁性体を用いない構造により、振動やノイズが抑えられ、筐体設計の自由度も飛躍的に向上している。
もう一つの中核技術「µCooling」は、圧電薄膜の振動で空気流を生み出すチップスケール冷却技術である。回転機構を持たないため静音・低振動・高信頼性を実現し、スマートフォンやARグラスなど熱密度の高いデバイスに適応。微細な空気の流れで発熱部の温度上昇を効率的に抑制し、AI処理に伴う発熱課題を解消する次世代の熱管理ソリューションとなっている。
ピエゾMEMSの量産化と応用拡大
同社は、今回の資金調達によってピエゾMEMSスピーカーおよびマイクロ冷却チップの量産と商用展開を本格化させる方針だ。特にAI対応のイヤホンやスマートグラス、ウェアラブル機器などに向け、軽量・薄型で高音質なデバイス設計を可能にする量産プロセスを整備する。また、主要OEM・ODMとの協力を強化し、グローバルな製造・供給ネットワークの確立を目指している。
また、音響と冷却にとどまらず、ピエゾMEMS技術を次世代AIデバイス向けの汎用プラットフォームとして発展させる構想を掲げる。圧電薄膜技術の改良により高効率・高応答化を進め、触覚フィードバックやマイクロ流体制御など新分野への応用も視野に入れる方針だ。CEOのJoseph Jiang氏は、「AI時代のハードウェア課題を解決する基盤技術として進化させる」と述べている。
参考文献:
※1:xMEMS Raises $21M Series D to Accelerate Commercial Scale of Breakthrough piezoMEMS Technologies for AI-Enabled Consumer Devices( リンク)
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