ドローンで電力網の構築・保守を行うインフラビジョンは、シリーズBで 9,100 万ドルの調達を発表
Infravisionは、ドローンと地上ロボティクスを統合した「TX System」により、送電線の建設・保守を自動化・効率化するスタートアップ。従来のヘリコプターや人力施工に代わり、より安全で迅速、かつ低コストな送電インフラ構築を可能にする。既に4か国で40件以上の大型案件を実施し、電力網拡充が急務となる世界的需要に応える次世代工法として注目されている。
2025年11月、同社はGIC(シンガポール政府系ファンド)主導のシリーズBラウンドで9,100万ドルを調達。既存投資家Energy Impact Partnersのほか、Activate CapitalやHitachi Venturesも参加した。今回の資金は北米市場での事業拡大、製造体制強化、エンジニア採用に充当される。世界的な電化・再エネ移行に伴い、送電インフラ構築の自動化技術としての成長加速が期待される。
再生可能エネルギーの普及や電動化の進展により、各国で送電網の新設・増強需要が急増している。しかし送電線工事は、地形条件や気象リスクに左右される重労働であり、ヘリコプターや高所作業を伴う危険性の高い工程が多い。これにより建設コストや工期が膨らみ、人材確保や安全基準遵守が難しくなっている。特に山岳地帯や長距離幹線では、環境負荷と作業効率の両立が大きな課題となっている。
同社は、ドローンと地上ロボティクスを統合した「TX System」により、送電線敷設を自動化・無人化するソリューションを開発。既存の送電塔間を空中経路で接続することで、従来のヘリコプター施工を不要とし、コスト・時間・事故リスクを大幅に削減する。AI制御やセンサーデータ解析を組み合わせ、精密な張線・点検作業を実現。環境負荷を最小化しつつ、安全かつ迅速な電力インフラ構築を可能にしている。
ドローンと地上装置を統合した次世代送電線施工システムの技術構成
同社の「TX System」は、空中ロボティクスユニット(ドローン群)、地上支援ステーション(Ground Control Unit:GCU)、架線ハードウェアモジュール(Conductor Deployment Unit:CDU)の三要素で構成される。ドローンが送電塔間に導索を展開し、GCUが自動制御と張力管理を担う。CDUは導線の供給とテンション制御を行い、複数ユニットが協調動作することで高精度な張線を実現する。
TX Systemは、ドローンによる空中経路展開と地上装置の連携制御を統合した自動施工システムである。AIが地形条件や塔間距離、風速データを解析し、最適な飛行経路と張力をリアルタイムで制御する。これにより、従来ヘリコプターと人力で行っていた危険な高所作業を無人化し、安全かつ迅速な送電線敷設を可能にしている。
同システムはモジュール化設計により既存インフラにも容易に適応でき、施工コストを最大80%削減、工期を半減する効果を示している。さらに、強風下でも安定した張線を維持できる動的制御技術を備え、環境負荷と作業リスクを大幅に低減。すでに北米や豪州で商用運用が進んでおり、送電インフラ建設の自動化と省力化を牽引する次世代技術として注目されている。
グローバル展開と技術拡張による電力インフラ革新の加速
同社は今回の9,100万ドルのシリーズB調達を基に、北米を中心とした事業拡大を加速させる。米国での製造拠点整備やエンジニア採用を進め、ユーティリティや施工業者との連携を強化。トラックベース空中ロボティクスシステム「TX System」の普及を通じて、送電網拡張需要の高まりに対応する。2040年までに世界の電力グリッドが倍増すると見込まれる中、同社はより迅速で低コストな施工モデルの確立を目指す。
また、TX Systemの高性能化とサービス領域の拡張にも取り組む。長距離・高電圧線への対応力強化、気象変動に耐える動的制御アルゴリズムの開発に加え、施工データを活用した予知保全や運用最適化への応用を進める。建設フェーズにとどまらず、インフラ維持・運用を包括する新たな事業モデルを構築し、電力インフラのライフサイクル全体を支えるプラットフォーム企業への進化を目指している。
参考文献:
※1:Infravision Raises $91 Million Series B Led by GIC to Revolutionize Power Infrastructure Construction with Aerial Robotics( リンク)
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