軍用ドローンを開発するNerosがシリーズBで7500万ドルの資金調達を発表
Nerosはカリフォルニア州エルセンドロに拠点を置くドローン開発企業である。軽量で扱いやすい※FPVドローンを自社で設計し、米軍や同盟国向けに供給していることが特徴である。生産設備を自社でまとめて整えることで大量生産に対応し、海外部品への依存を減らしている。安全保障分野で需要が高まる中、安定した供給体制を築く企業として注目されている。
2025年11月、同社はシリーズBで7,500万ドルを調達した。主導はSequoia Capitalで、複数の投資家が参加した。今回の資金は、主力ドローンの量産強化や生産体制の拡大に充てられる予定である。また、次世代型の無人機の研究開発も進める方針である。これにより、同社は米国および同盟国への供給力をさらに高める体制を整えるとみられる。
※FPV型ドローン:機体に搭載したカメラの映像を操縦者がリアルタイムで見ながら操作するドローン。映像を直接見て操作するため、細かな動きがしやすく、低空飛行や障害物の多い環境でも扱いやすい点が特徴。
米国や同盟国ではドローン需要が急拡大しているが、多くが海外製部品に依存し、安定供給と品質確保が難しい状況が続いていた。特にFPVドローンは大量に必要とされるため、供給の遅れやコスト上昇が現場の大きな負担となっていた。また、任務に応じた改良や電子妨害への耐性強化などを短期間で進める体制が整っておらず、運用面でも課題が残っていた。
同社は設計から製造までを一貫して行う体制を整え、海外依存を抑えた安定供給を可能にしている。軽量で扱いやすいFPVドローンを中心に量産を進め、需要の増加に対応している点が強みである。さらに、現場の要求を迅速に反映できる開発サイクルを構築し、操作性や耐久性を高めた改良を継続的に実施している。これにより、供給不安と運用上の課題を同時に解決し、信頼性の高いドローンを安定して提供する体制を確立している。
モジュール構造・軽量設計・通信最適化により性能向上を図る
同社のドローンは、機能単位で部品をまとめるモジュール構造を採用している。この方式により組み立てや修理が短時間で済み、現場での稼働率が大きく向上する。用途に合わせた交換や小規模な改良もしやすく、訓練・偵察・戦術など幅広い任務に適応できる。必要な性能を素早く追加できる柔軟な設計が、運用現場の多様な要求に応える基盤となっている。
このドローンは、軽量なフレームと衝撃に強い構造を組み合わせることで、激しい動きが求められるFPV運用に耐えるつくりとなっている。素材選定や部品配置を工夫し、落下や接触による損傷を抑えることで、交換作業を最小限にできる点が特徴である。重量を抑えたことで操縦性も向上し、狭い空間や低空での精密な飛行を実現している。
同社が手がける機体では、通信機器や電装部品の配置を綿密に調整し、信号の乱れや操作遅延を抑えている。電源ラインやアンテナの位置を最適化することで、妨害を受けても映像と操作が安定しやすい。制御負荷を分散させる構造も取り入れ、長時間の運用でも操縦が乱れにくい。こうした基本設計が、現場での扱いやすさと信頼性を支えている。
製造強化と同盟国対応を見据えた将来計画
同社は今回のシリーズB資金調達を契機に、生産能力の大幅拡大を図る。主力ドローン「Archer/Archer Strike」および制御システムの量産を加速し、さらに中国依存を抑えたサプライチェーンを確立する。さらに、垂直統合型の製造アプローチを深化させ、重要な生産工程を社内回収することで、米国および同盟国向けに安定的かつスケーラブルなドローン供給基盤を構築する。
また、同社はグローバル展開を強化し、ウクライナ、英国防省(UK MoD)など同盟国市場にも積極的に対応する。通信・製造・運用の連携を高め、需要の波動に強い供給体制を目指す。加えて、研究開発にも注力し「次世代自律システム」の構築を掲げており、軍・防衛市場における技術優位を長期的に維持する方針である。
参考文献:
※1:Neros Closes $75M Series B Fundraise led by Sequoia Capital( リンク)
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