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トヨタ工場で稼働する汎用ロボットを開発するWalden Robotics、3億ドル調達

米国マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするWalden Roboticsは、製造・物流現場向けの汎用ロボットを開発するフィジカルAI企業である。2026年1月にToyota Research Institute(TRI)から独立して設立され、AIモデルからロボット本体、現場への導入支援までを一体で手がける。

同社は2026年7月15日、シードラウンドで3億ドルを調達したと発表した。企業評価額は11億ドルとなる。トヨタ自動車、Toyota Invention Partners、Toyota Venturesで構成されるトヨタグループとDeviation Capitalが共同で主導し、NVIDIA、Boeing、Samsung Ventures、Prologis Ventures、CoreWeave Venturesなどが参加した。

研究デモではなく、工場の実作業から始めるフィジカルAI

今回の発表で注目されるのは、ロボットの将来的な構想だけでなく、すでに工場の生産環境へ導入されている点である。同社の汎用ロボットは2026年2月から北米のトヨタ工場で稼働しており、最初の実証から2カ月未満で実作業へ移行したという。

同社が対象とするのは、製造工程や製品の変化が多く、特定の動作を繰り返す従来型の産業ロボットでは対応しにくい作業である。人と同じ生産環境へロボットを配置し、作業者が身体的な負担の大きい仕事や自動化の難しい工程を任せられるようにする。自動車のほか、航空宇宙、半導体、電子機器、物流、ライフサイエンス分野の企業とも連携している。

特徴的なのは、導入時点から完全自律を求めず、自律制御と人による遠隔支援を組み合わせていることである。ロボットが判断に迷った場合には人が支援し、その経験を次の学習へつなげる。研究室で十分な能力を完成させてから導入するのではなく、現場で仕事を続けながら適応範囲を広げる運用モデルと考えられる。

多様な作業を学ぶLarge Behavior Model

同社の技術基盤には、TRIの研究チームが開発してきた「Diffusion Policy」と「Large Behavior Model(LBM、大規模行動モデル)」がある。Diffusion Policyは、カメラなどから得た観測情報をもとに、ロボットが取るべき一連の動作を拡散モデルで生成する手法である。単一の動作を直接出力するのではなく、複数の行動候補から周囲の状況に合う動作を段階的に導き出す。

LBMは、この仕組みを多数の作業データで事前学習させたロボット向けの基盤モデルである。TRIの研究では、手首や周辺に設置したカメラ映像、ロボットの関節状態、言語による指示を入力し、1.6秒分に相当する16ステップの動作をまとめて予測する。視覚と言語を処理するエンコーダーと、動作を生成する拡散型Transformerを組み合わせている。

同研究では、実機やシミュレーション、公開データを含む約1,700時間のデータでモデルを学習し、実機で1,800回、シミュレーションで4万7,000回を超える評価を実施した。事前学習済みのLBMを新しい作業へ調整すると、ゼロから学習する場合より必要なデータを3分の1から5分の1に抑えられたという。一方、追加学習を行わない状態では、作業専用モデルを常に上回るわけではない。同社にとっては、工場で得られるデータを使い、モデルを個別工程へ継続的に適応させることが重要になる。

トヨタ以外への展開と導入効果が焦点

今後は、トヨタ工場での運用を足がかりに、製造業や物流分野へ導入先を広げる方針である。対応できる作業の種類だけでなく、導入までに必要な期間、稼働率、人による支援の頻度、別の工場へ作業能力を移転できるかが事業化の焦点となる。

共同創業者兼CEOのRuss Tedrake氏は、フィジカルAIの技術的な進歩だけでは顧客価値や持続可能な事業を構築できず、現在の製造現場を深く理解する必要があるとの認識を示した。トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長兼CTOも、導入初日から価値を提供し、学習を通じて改善しながら人を中心に据える点を同社の特徴として挙げている。

実作業から得られるデータをモデルの改善へ戻す循環を構築できれば、同社のロボットは個別工程を自動化する設備にとどまらず、工場全体の生産性を継続的に高めるフィジカルAI基盤へ発展する可能性がある。


参考文献:

※1:Walden Robotics Launches with $300 Million to Put General-Purpose Robots to Work Today( リンク

※2:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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