AIデータセンター向け光スイッチを開発するiPronicsが1.25億ドル調達 NVIDIAも出資
スペイン・バレンシアのiPronicsは、AIデータセンター内でGPU同士を光信号のままつなぎ替えるスイッチを開発する2019年設立の企業である。バレンシア工科大学の研究から生まれ、光回路を半導体チップ上へ集積するシリコンフォトニクスを事業化している。
同社は2026年9月2日、シリーズBで1億2,500万ドルを調達した。Maverick SiliconとLight Street Capitalが共同主導し、NVIDIA、Bosch Venturesなどが参加した。累計調達額は1億7,700万ドルとなり、製品の量産と商用導入の拡大に充てる。
研究用の光回路からAIデータセンターへの商用展開
AIの学習や推論では、多数のGPUが処理途中のデータを絶えず交換する。GPUを増やしても通信が詰まれば、高価な計算資源が待機する時間が生じる。同社は、接続先を固定した配線の間に、ソフトウェアで経路を変えられる光スイッチを加え、処理内容や機器の稼働状況に合わせてGPU間のつながりを組み替える。
同社は2025年5月に32ポートの商用機を発売した。2026年3月には、最初のハイパースケーラーとAI機器メーカー計10社で採用が進んでいると説明し、製造受託大手Fabrinetに専用ラインを設ける計画も発表した。今回の資金は米国での製品戦略、顧客への導入支援、量産体制の拡大にも使われる。
当社メディアでも以前、シリコンフォトニクスによる通信・スイッチングを取り上げた。光で演算する企業や光信号を送受信するチップ企業に対し、iPronicsはデータの通り道そのものを切り替える点が異なる。今回、日本企業による出資や提携、日本市場への展開は公表されていない。
光を電気へ戻さず接続先を変えるシリコン回路
一般的な電気式スイッチは、届いた光信号を電気へ変え、データを小分けした単位ごとに宛先を判断してから再び光へ戻す。光回路スイッチは、GPUやサーバーの間に一定時間使う専用の光路を作り、信号を光のまま通す。大量のデータが継続して流れるAI処理では、変換と中継に伴う遅延や消費電力を抑えられる可能性がある。
創業者らが報告したプログラマブル光回路では、光を導く細い経路と、光を分岐・合流させる小さな素子をシリコンチップ上に集積する。二つに分けた光の位相を変えて重ね、干渉によって進ませる方向を選ぶ。多数の素子を網目状につなぐことで、配線し直さずに入口と出口の組み合わせを変更できる。
経路ごとの光の強さは半導体光増幅器と監視回路で補正し、制御用APIから接続設定と状態確認を行う。公表値では、光が装置を通る遅延は30ナノ秒未満、経路の切り替えは300マイクロ秒未満である。機械的な可動部を持たない一方、ポート数を増やした際の光損失や発熱、長期信頼性は大規模導入での検証が必要となる。
米国拠点と量産ラインを軸とする導入拡大
同社は米カリフォルニア州サンタクララに拠点を開設し、製品開発、顧客導入、AIインフラ企業との連携を担う人材を採用する。Fabrinetとの製造体制を拡張し、研究設備や試験導入から、複数のデータセンターで継続利用される製品へ移行できるかが焦点となる。
CEOのChristian Dupont氏は、今回の資金で商用化を加速し、顧客が必要とする規模で製品を供給してGPUを十分に稼働させると説明した。共同主導したMaverick SiliconのManish Muthal氏も、AIの成長で既存ネットワークが電力と通信容量の限界に近づき、光回路スイッチの重要性が増していると述べている。
参考文献:
※1:iPronicsによる1億2,500万ドルのシリーズB調達発表(リンク)
※2:iPronics公式サイト「Company」(リンク)
※3:同社創業者らによるプログラマブル光回路の論文(リンク)
※4:当社メディア「シリコンフォトニクスが進化させる通信・スイッチング」(リンク)
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