CT画像から動脈硬化プラークを解析するElucidが5,500万ドル調達
米国ボストンのElucidは、冠動脈や頸動脈のCT血管造影画像をAIで解析し、血管壁にたまったプラークの量と種類を数値化する医療技術企業である。心筋梗塞や脳梗塞につながりやすい脂質性プラークの把握を支援する。
同社は2026年9月2日、シリーズDで5,500万ドルを調達した。IAG Capital Partners、Patient Square Capitalが設立したElevage Medical Technologiesなどが参加し、累計調達額は約1億8,500万ドルとなった。資金は米国での販売拡大、新機能の開発、臨床研究に充てる。
血管の細さだけでなくプラークの性質を調べる診断支援
動脈硬化では、血管がどれだけ細くなったかに加え、血管壁にたまったプラークの性質が重要となる。内部に脂質を多く含むプラークは破裂し、血栓を生じさせる可能性がある。同社は通常のCT血管造影画像から、石灰化した組織、結合組織、脂質に富む壊死領域などを分け、患者、血管、病変ごとに数値化する。
中核ソフトウェアは2024年9月、米食品医薬品局(FDA)の510(k)クリアランスを取得した。2026年には病変を選んで組成を確認する機能を商用提供し、冠動脈プラーク解析には米国で診療報酬上の区分も整った。今回の資金調達は、研究用の画像解析から日常診療で継続利用される製品へ移る段階を支えるものとなる。
新たな投資家には社名非公表の大手医療機器企業も含まれ、同社にとって4社目となる上場企業の戦略投資家が加わった。当社メディアでも以前、網膜画像から心血管リスクを推定するMediwhaleを取り上げた。Elucidは既に撮影された血管のCT画像を使い、病変そのものの量と組成を調べる点が異なる。日本企業の出資や日本展開は公表されていない。
病理標本を教師データにするCT画像解析
CT血管造影では造影剤を注入し、X線の吸収量を三次元の画素として記録する。血管内腔や壁、プラークは明るさの違いとして現れるが、心拍によるぶれや石灰化が実際より大きく見える現象が判別を難しくする。同社は画像補正を行った後、血管を立体的に切り出し、AIで組織の範囲と種類を推定する。
特徴は、CT画像だけから作った人為的な基準ではなく、手術で取り出した組織を顕微鏡で調べた病理標本を教師データに使う点である。研究ではCT画像と2mm間隔の組織断面を対応させ、石灰化、脂質に富む壊死領域、プラーク内出血などを病理医が分類した。AIは両者の関係を学び、新しいCT画像から組成と安定性を推定する。
2023年の検証研究では53人から得た計904断面を用い、AIの安定・不安定プラーク分類と病理診断の一致度を確認した。ただし、症例数は限られ、解析結果は医師が病歴や他の検査と合わせて判断する補助情報である。同社はさらに、血管の形状とプラークの性質から狭窄部前後の圧力差を推定し、心筋への血流不足を調べる機能を開発している。
FDA審査中の血流評価機能と1,000人規模研究
同社は調達資金を使い、プラーク解析の販売を広げるとともに、CTから血流低下を推定するFFR-CT機能の市場投入を目指す。同機能はFDAへ510(k)申請中であり、承認はまだ得ていない。約1,000人を対象とする国際研究では、心筋梗塞を起こした病変と安定した病変を比較し、病変単位の予測力を検証する。
CEOのKelly Huang氏は、がん医療が一律の治療から個別化へ移ったように、冠動脈疾患でも解剖、プラークの性質、血流を統合し、患者別の治療につなげる考えを示した。今後は、FDA審査と研究結果に加え、実際の診療で治療方針や発症率の改善につながるかが焦点となる。
参考文献:
※1:Elucidによる5,500万ドルのシリーズD調達発表(リンク)
※2:Elucidによる動脈硬化プラーク解析技術の説明(リンク)
※3:米食品医薬品局によるPlaqueIQの510(k)審査資料(リンク)
※4:CT画像と病理標本を用いたプラーク分類の検証論文(リンク)
※5:当社メディア「網膜スキャンで心疾患などの予測をするMediwhaleがシリーズA2資金調達で17億円を確保」(リンク)
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