海面近くを飛ぶ電動輸送機を開発するREGENT Craftが総額2.4億ドル調達 JALも出資
米国ロードアイランド州のREGENT Craftは、港では船として航行し、沖合では海面近くを飛ぶ全電動輸送機を開発する2020年設立の企業である。沿岸都市や離島を結ぶ旅客・貨物輸送を主な用途とし、既存の港湾設備から運航できる設計を採る。
同社は2026年8月27日、シリーズBで総額2億4,000万ドルを調達した。内訳は株式1億2,000万ドルと融資1億2,000万ドルである。Mare LiberumとAE Venturesが株式調達を共同主導し、既存投資家の日本航空(JAL)なども参加した。
株式と融資を組み合わせた量産移行と日本での商用化
今回の資金は、研究開発だけでなく、完成した約25万5,000平方フィートの工場で生産を始めるための設備や運転資金に充てる。株式と融資を半分ずつ組み合わせたのは、機体の開発リスクを負う資本と、工場や受注に対応する製造資金を同時に確保する構成とみられる。累計調達額は株式・融資を合わせて3億4,000万ドルとなった。
同社によれば、旅客・フェリー事業者などからの受注予定額は6大陸で100億ドルを超え、数年分の生産枠が埋まっている。ただし、主力の12人乗り機は実物大試作機による海上試験の途中で、初の有人飛行と商用運航の認証はこれからである。受注額は将来の契約を含むため、現在の売上高とは区別する必要がある。
JALは2023年にCVCを通じて同社へ出資し、今回も既存投資家として参加した。商船三井も別途出資しており、両社はLloyd’s Registerと同社を含む4社で、日本における船舶認証と運航許可の取得方法を共同開発する。日本の沿岸都市や離島を結ぶ旅客・貨物輸送を想定し、2030年ごろの商用化を目指
水上走行から海面近くの飛行へ移る仕組み
機体は港を出るときは船体を水に浮かべて低速航行し、沖合で速度を上げると水中翼によって船体を水面から持ち上げる。水との接触を小さくして抵抗と波の影響を抑え、離水に必要な速度まで加速する。離水後は水中翼を格納し、海面から数メートルの高さを飛ぶ。
海面近くでは、翼の下向きの空気が水面に遮られ、翼端で生じる渦や空気抵抗が弱まる「地面効果」が働く。通常の航空機より少ない電力で揚力を得やすくなる一方、機体は翼幅以内の高さを保って海上だけを移動する。この運航範囲により、米国では航空機ではなく船舶として沿岸警備隊の認証を受ける。
主力機は12基の電動モーターとプロペラを翼に分散配置し、低速でも翼へ空気を流して揚力を確保する。船体、水中翼、飛行の制御を連続的に切り替え、レーダー、前方監視ソナー、赤外線カメラなどで周辺を捉える。公表仕様では12人と乗員2人を乗せ、最高速度は約300km/h、航続距離は約300kmである。
初の有人飛行と2030年に日本運航を予定
同社は調達資金を使い、実物大試作機の初の有人飛行、米国沿岸警備隊による設計・運航認証、量産設備の立ち上げを進める。最初の顧客向け納入は2027年を計画するが、有人飛行の完了時期や認証取得によって変更される可能性がある。
共同創業者兼CEOのBilly Thalheimer氏は、今回の投資を開発から生産へ移る転換点と位置づけ、製造拡大、認証、顧客への納入を進めると説明した。Mare LiberumのLorin Selby氏も、海上輸送に求められる速度、航続距離、柔軟性を備える新たな選択肢として評価する。
日本では商船三井とJALが、海運と航空で蓄積した安全運航の知見を持ち寄り、Lloyd’s Registerの第三者評価を受けながら認証手順を整える。機体の性能だけでなく、国内法上の位置づけ、港湾設備、乗員訓練、荒天時の運航基準を具体化できるかが商用化の焦点となる。
参考文献:
※1:REGENT Craftによる総額2億4,000万ドルのシリーズB調達発表(リンク)
※2:同社HP(リンク)
※3:商船三井による日本での認証・商用化に関する共同開発発表(リンク)
※4:JALによるREGENTへの出資と日本運航に関する提携発表(リンク)
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