Fervo Energyは、石油・ガス分野の水平掘削やデータ解析技術を活用し、次世代地熱発電(強化地熱システム:EGS)を開発する米国企業。従来は立地制約の大きかった地熱を、場所を選ばず導入可能な電源へと進化させ、24時間365日稼働するカーボンフリーの安定電力を提供。AIデータセンターなど急増する電力需要を支える基盤電源として注目されている。
同社は、B Capital主導のシリーズEで4億6200万ドルを調達した。Google、Breakthrough Energy Ventures、三井物産などが参加し、同社最大規模の資金調達となる。資金はユタ州で開発中の旗艦地熱発電所「Cape Station」の建設加速や新規案件の初期開発に充当。2026年に100MW、2028年に最大500MW規模への拡張を計画している。
水平掘削とデータ技術で地熱発電の立地制約とリスクを克服
地熱発電は天候に左右されない安定電源である一方、適地が限られ、初期掘削コストや開発期間の長さが普及の障壁となってきた。地下資源の不確実性や掘削失敗リスクが高く、商業規模での投資判断が難しい点も課題だ。AIや電化の進展で電力需要が急増する中、短期間で安定供給できるクリーン電源の不足が顕在化している。
同社は、水平掘削とリアルタイムデータ解析を組み合わせた強化地熱システム(EGS)により、立地制約と技術的不確実性を克服。地下の温度や流量を可視化しながら開発することで、掘削成功率と発電効率を高めている。地熱を再現性のある工業電源としてスケールさせ、24時間稼働のクリーン電力供給を実現する。
人工的に地熱を作り出す次世代発電技術の全体像
同社は、強化地熱システム(EGS)を中核に、人工的に地下の高温岩体から熱を回収する次世代地熱発電を開発している。自然の熱水資源に依存する従来方式と異なり、地下に流路を形成することで地熱資源の立地制約を大幅に緩和し、従来は開発が難しかった地域でも地熱発電を可能にする。これにより、再生可能エネルギーでありながら24時間安定稼働するベースロード電源としての実用化が進んでいる。
このEGSの実装にあたり、石油・ガス産業で確立された水平掘削技術を採用している。地下深部で水平方向に長距離掘削を行うことで高温岩体との接触面積を拡大し、効率的な熱回収と高出力化を実現。掘削本数の削減によるコスト低減と、商業規模でのスケール展開を可能にしている。
さらには、分散型光ファイバーセンサーを用いたリアルタイム地中データ計測を導入し、地下の温度や流量、圧力を常時モニタリングしている。取得したデータをもとに掘削や運用条件を最適化することで、開発リスクと不確実性を低減し、発電効率を向上。経験に依存していた地熱開発をデータ駆動型へ転換し、再現性の高い次世代地熱発電の量産化を目指している。
発電所建設、需要家契約、開発モデル横展開による成長戦略
今後、まずユタ州の旗艦地熱発電所「Cape Station」で掘削・注入・発電設備の建設を段階的に進め、2026年の100MW稼働、2028年の最大500MW化を確実に実行する。同時に、電力会社や大口需要家との長期電力購入契約(PPA)を拡大し、安定した収益基盤を早期に構築する計画だ。
さらに、Cape Stationで確立した掘削手法、運転データ、コスト構造を標準化し、他地域の開発案件へ横展開する。複数の地熱プロジェクトを並行して立ち上げる体制を整え、AIデータセンターや電化産業向けに24時間稼働可能なクリーン電力を継続的に供給することで、事業規模の拡大と長期成長を実現していく。
参考文献:
※1:Fervo Energy Raises $462 Million Series E to Accelerate Geothermal Development and Meet Surging Energy Demand with Clean, Firm Power( リンク)
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