職場向けメンタルヘルスプラットフォームを提供するUnmindが2,600万ドルの資金調達を発表
ロンドン発のUnmind は、職場向けメンタルヘルスプラットフォームを提供している。同社のソリューションは、睡眠改善、ストレス軽減、不安管理、人間関係育成などのセルフガイドツールに加え、AIコーチング、セラピー、EAP、チームの心理的安全性を可視化する機能など、予防から危機対応まで包括的にカバーしている。
2025年9月11日、米国のTrinity Capital から2,600万ドルの資金(debt financing)を調達し、総調達額は1億ドルを突破した。今回の資金は、AIメンタルヘルスエージェント Nova の高度化、テクノロジー投資、グローバル展開、特に米国市場での導入拡大および人材強化に充てられる。 現在、同社のソリューションは世界中で約300万人の従業員をサポートしており、Kearney、Mediacom など米国の大手企業を含む多様な組織で導入されている。心理的安全性の構築やバーンアウト対策、組織文化変革を支援することで、企業のウェルビーイング戦略を加速している。
臨床心理士のCEOが、職場のメンタルヘルス問題を解決するため設立
近年、世界中で職場のメンタルヘルス問題が深刻化しており、ストレスやバーンアウト、睡眠障害、うつや不安といった課題は、個人の生活の質を下げるだけでなく、生産性低下や離職率の上昇、組織文化の悪化といった形で企業全体にも影響を及ぼしている。多くの場合、こうした問題は初期段階では気づかれにくく、サポート体制や心理的安全性が十分でない職場では、助けを求めることさえ難しい。結果として、対応が遅れ、問題が慢性化・重症化するケースも少なくない。
同社は、こうした現状に課題意識を抱いた臨床心理士であり現CEOの Dr. Nick Taylor によって2016年に設立された。彼は現場で、適切なタイミングで適切なケアを受けられない人が多いという現実に直面し、「人々がもっと早く自分の心の状態に気づき、支援を受けられる世界をつくる」というビジョンのもと企業を創業。科学的エビデンスに基づいたアセスメントとセルフケアツール、コーチングやセラピーなどの専門的サポート、さらに組織文化を改善するための仕組みを一体化したプラットフォームを開発した。これにより、従業員、マネージャー、企業全体がそれぞれのレベルでウェルビーイングを推進し、健全で持続可能な職場環境を実現することを目指している。
セラピストとのマッチングからセルフケアまでをAIで最適化
同社は、科学とテクノロジーを融合した職場ウェルビーイングプラットフォームを提供している。個人向けには、睡眠やストレス、不安管理などに取り組むセルフガイドツールとウェルビーイングを可視化するアセスメントを提供し、必要に応じてライセンスを持つセラピストやコーチとつながることができる。AIマッチング機能が最適な専門家を提案し、言語や時間帯、専門分野まで含めて利用者に合わせたマッチングを行うことで、支援へのアクセスを容易にしている。このソリューションの中心的な役割を担うAIコーチ「Nova」は、24時間いつでも利用可能なチャット型ウェルビーイングコンパニオンだ。ユーザーの状況や感情に応じて対話を通じたサポートを行い、適切なコンテンツや次の行動を案内する。Nova を導入した企業では、従業員の約6割が実際に利用を開始し、エンゲージメントは導入前の約1.8倍に向上。さらに、長期間使い続ける従業員の割合も業界平均を20%以上上回っており、継続的に活用される仕組みとして定着している。
さらに、同社のコンテンツは CBT や ACT、マインドフルネスなど臨床的エビデンスに基づいて設計されており、ポジティブ心理学や組織心理学の理論も活用している。チーム単位では心理的安全性やエンゲージメントのデータを可視化し、マネージャーや経営層がエビデンスに基づく改善施策を打てるよう支援する。セキュリティ面では ISO 27001 認証や GDPR 準拠を含む厳格なデータ保護体制、AI 倫理ガイドラインを整備し、EU AI Act や米国のAI憲章にも準拠した運用を行っている。
こうした科学的根拠、AIによるパーソナライズ、データ可視化、セキュリティ・倫理への配慮が統合されている点が、多くのグローバル企業から選ばれる理由となっている。
米国導入拡大とグローバル展開、AI精度向上を目指す
今回の資金調達により、同社は米国市場での展開を加速させる。プレスリリースによれば、調達した2,600万ドルは事業規模の拡大、AIメンタルヘルスエージェント「Nova」の開発強化、テクノロジー投資、人材獲得に充てられる計画だ。
グローバル展開も重要なテーマで、欧州、中東、アジアでの導入拡大やコンテンツの多言語対応、各国規制への準拠を進め、より多様な労働環境に適応するプラットフォームへ進化させる。AIコーチ「Nova」ではパーソナライズ精度や推奨機能を高め、従業員が課題に早く気づき適切なサポートにつながる体験を提供するほか、心理的安全性やエンゲージメントを可視化するデータレポート機能も強化していく予定だ。
同社の共同創業者兼 CEO、Dr. Nick Taylor 氏は「今回の成長資金によって、Nova の進化と国際展開を加速させ、より多くの人々がタイムリーに必要なサポートを受けられる世界を実現していきます」とコメント。
Trinity Capital のマネージングディレクター Craig Fowkes 氏も、「Unmind は人々と企業の繁栄のあり方を変革しており、職場にウェルビーイングをもたらすことに深くコミットしているチームと提携できることを誇りに思います」と述べている。
参考文献:
※1:Trinity Capital Inc. Provides $26 Million in Growth Capital to Unmind to Further Empower Workplace Mental Health( リンク)
※2:同社公式HP(リンク)
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