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産業用ロボットを開発するMUJINが364億円を調達

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Mujin は、物流・製造現場の機器を共通プラットフォーム「MujinOS」で統合制御する自動化技術を提供する企業である。ロボットやAGV、保管システム、センサを個別に連携させる必要がなく、迅速に導入できる点が特徴。デジタルツインにより現場の状態をリアルタイムに把握し、在庫や作業の最適化も行えるため、倉庫・工場の自動化を一貫して高度化できる。

同社はシリーズD初回クローズで364億円を調達し、累計596億円に到達した。内訳は株式209億円、デット155億円。NTT、カタール投資庁、三菱HCキャピタルリアルティ、Salesforce Ventures などが参加した。調達資金は、MujinOS の製品強化、グローバル展開、エンジニアリングやサポート体制の拡充に充てられ、同社の事業拡大を後押しする。

ロボットやAGVを一元制御し、現場全体を最適化する MujinOS

物流・製造の現場では人手不足が深刻化し、自動化の需要が高まっている。しかし従来の仕組みは、ロボットやAGV、在庫システムが個別に構築され、統合には多くの時間と専門スキルを要した。機器同士が連携しないまま部分最適化が進むことで、現場全体がうまく連携せず、自動化をすぐに広げられない点が課題だった。

同社は、ロボットやAGV、保管システムを「MujinOS」で一元制御し、個別インテグレーションを不要にする。デジタルツインで現場をリアルタイムに把握し、最適な協調動作を自動で行うことで、短期間で安定した自動化を構築できる。これにより導入工数とコストを抑えつつ、再現性の高い運用とスケールしやすい自動化基盤を実現する。


仮想空間で現場を再構成し、最適な動作指令を生成する制御技術

同社の中核技術「MujinOS」は、ロボット、AGV、保管ロボット、センサなど多様な機器を共通アーキテクチャで統合制御するプラットフォームである。従来は機器ごとに個別設定やインテグレーションが必要だったが、MujinOS により動作ロジックを一元管理でき、複雑な自動化でも短期間で立ち上げられる。機器間の協調動作を標準機能として扱える点が大きい。

MujinOS は、現場をデジタルツインとして常時再現し、稼働データをリアルタイムに解析して自動で最適化する。動線や負荷、在庫の変化を即座に反映し、最適な制御指示を出すため、管理者による細かな調整はほとんど不要になる。問題の早期検知や工程のボトルネック可視化にも強みを持ち、止まりにくい運用を支える。

さらに MujinOS は、デパレタイジングやピースピッキングなどのアプリケーションをテンプレート化し、複数拠点へ迅速に複製・展開できる。共通アーキテクチャにより動作の再現性が高く、現場ごとの大幅な調整を必要としないため、企業は自動化を短期間で横展開できる。拠点間の品質差を抑え、スケールしやすい自動化基盤となっている。


MujinOS の標準化と拡張で自動化を加速し、欧米中心にグローバル展開を加速

同社は今回の資金調達で、MujinOS を中心とした「製品主導型の自動化事業」へ本格的に移行する。CEO の 滝野一征氏は、「これまで解決できなかった現場の複雑な課題を、MujinOS が統合的に解消する段階に来た」と述べ、標準化された高性能アプリケーションの拡充と、短期間で導入できるスケーラブルなモデルの強化を進める方針を示した。

また、同社は工場・倉庫のデジタルツイン化を推進し、在庫把握・稼働率改善・早期異常検知などリアルタイム運用領域をさらに強化する。COO の Gilgur氏は「グローバル需要が急増しており、サポート体制とパートナーネットワークを拡大する」とコメントし、欧米を中心とした事業拡大に重点を置きつつ、安定操業と高稼働率を支える自動化基盤の提供を加速していく方針である。

参考文献:
※1:シリーズDラウンド初回クローズで総額364億円の 大型資金調達を実施リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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