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衛星サービスを展開するスターフィッシュ・スペース社がシリーズBで1億ドルの資金調達を完了

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Starfish Spaceは2019年に米国で創業。運用中の人工衛星に宇宙空間で接近し、寿命延長や廃棄を支援する軌道上サービス企業である。主力の「Otter servicing vehicle」を用い、静止軌道衛星の延命ミッションと低軌道衛星の廃棄ミッションを提供する。

同社は4月、Point72 Ventures主導で1億ドル超のSeries Bを調達した。Activate CapitalとShield Capitalが共同リードし、既存・新規投資家も参加した。調達資金は、契約済みOtterミッションの遂行、事業拡大、人材採用に充てられ、年内の初の本格Otterミッション投入を後押しする。

衛星の延命・廃棄支援に資金が流入

今回の資金調達で重要なのは、同社が衛星サービシングを将来の有望技術として示す段階ではなく、実際に案件を遂行する事業として拡大しようとしている点だ。4月7日に発表した1億ドル超のSeries Bで、同社は契約済みOtterミッションの遂行、事業拡大、人材採用に資金を投じる方針を示しており、開発中心のフェーズから運用フェーズへの移行がうかがえる。

注目すべきは、単に大型調達を実現したことではなく、すでにU.S. Space ForceやNASA、SESなどとの契約を獲得し、複数の実証ミッションを経たうえで、年内に初の本格Otterミッション投入を見込んでいる点にある。今回のニュースは、宇宙スタートアップの資金調達というより、衛星サービシング市場そのものが実装段階へ入りつつあることを示す材料といえる。

弊社で以前取り上げた通り、宇宙産業では打ち上げや衛星開発だけでなく、打ち上げ後の宇宙空間で価値を提供するインフラ領域にも資金が集まり始めている。Catalyx Spaceが軌道上物流や回収を含む宇宙インフラの商用化を目指していたのに対し、Starfish Spaceは衛星の寿命延長や廃棄支援に特化することで、同じく運用フェーズを支える事業を展開している。今回の調達は、宇宙産業の事業領域が「作る」「運ぶ」だけでなく、「運用を支える」段階へ広がっていることを示している。

Otterを支える自律接近・ドッキング技術

同社のOtterは、静止衛星の寿命延長や低軌道衛星の廃棄を担う小型の軌道上サービス機である。特徴は、運用中の衛星に自律的に接近し、ドッキングしてサービスを提供できる点にある。同社は、これを小型かつ低コストのservicing vehicleと位置づけており、燃料切れが近い衛星の延命や、衝突リスクを持つ老朽衛星の安全な処分を想定する。

技術の中核は、自律的なRendezvous, Proximity Operations, and Docking(RPOD)を支える3つの要素だ。航法ソフト「Cetacean」は双眼コンピュータビジョンで相手衛星との相対位置や姿勢を把握し、誘導制御ソフト「Cephalopod」は安全機能を組み込んだ近傍運用を担う。さらにドッキング機構「Nautilus」は、専用インターフェースを持たない衛星にも対応でき、ほぼあらゆる平坦面に付着できる点が特徴である。これによりOtterは、既存衛星にも後付けでサービスを提供しやすい構成になっている。

防衛・商業需要を追い風に事業拡大へ

今後の方針として同社は、今回のSeries B資金を契約済みのOtterミッションの遂行、Otter事業の拡大、人員増強に投じる。共同創業者Austin Link氏も、契約済み案件と実証実績、さらに年内の初の運用ミッション投入を挙げ、「軌道上インフラを最大限活用できるよう支援する準備が整った」と述べている。

つまり同社は、技術実証を重ねる企業から、実際の衛星サービシングを継続提供する事業者へ移行しようとしている。Point72 VenturesのChris Morales氏も、防衛・商業顧客での初期需要と自律ミッションの成功を踏まえ、軌道上サービスの重要性が宇宙運用や国家安全保障で高まっていると評価している。


参考文献:

※1:Starfish Space Raises Over $100 Million Series B( リンク

※2:同社HP( リンク




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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