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米地熱発電のFervo Energyが298億円を資金調達。Bill Gates氏率いる組織の投資部門が145億円を拠出

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地熱発電スタートアップの米Fervo Energyは2025年6月11日、$206m(約298億円)の資金調達を実施したことを発表した。

Fervoは2017年、設立。本社はテキサス州ヒューストンに所在する。同社は地熱の専門家の他、石油やガスにおける水平掘削の技術者を擁し、二酸化炭素(CO2)排出のないエネルギー生産を米国で行うことを目指す。

光ファイバーケーブルを敷設し熱エネルギーをモニタリング

地熱発電は、文字通り地中の蒸気や湧水といった熱エネルギーを地表まで汲み上げ、それをタービンによって電気へと変換する。電気へ変換した後に残る水は、再び地中へ戻し、循環させる仕組みだ。このプロセスで、CO2は発生しない。

よいことばかりのようだが、地熱発電にも短所はある。その一つが、地熱発電に適した場所を見つける作業の難しさだ。発電できるだけの熱エネルギーが、地球のどの場所でも確保できるというわけではない。

Fervoはこの課題を乗り越えるため、坑井底に光ファイバーケーブルを設置し、熱の流量や温度などのリアルタイムデータを収集。また、地熱発電に適した場所であるか、発電した場合の熱採掘効率化を最大化するため、データ分析アルゴリズムも開発している。

これらを活用し、可能な限り無駄のない掘削や地熱発電の開始につなげる。

Fervoは現在、ユタ州ビーバー郡に「ケープステーション」と呼ばれる地熱発電ステーションの開発を行っている。2026年に100メガワット、2028年までに400メガワットを、ここから送電網へと供給することを目指す。

開発が進むケープステーション(X-Caliber Capital Holdingsのプレスリリースより)

資金調達を発表した前日の10日には、ケープステーション内の「シュガーローフ評価井」の掘削に成功したと発表。16日間で完了し、米エネルギー省の基準より79パーセント、短い時間で掘削した。

シュガーローフ評価井で計測した温度は260度前後であり、数百ギガワットの発電が可能だという。

「クリーンエネルギー嫌い」なTrump政権下でも多額の資金が集まる理由

2025年6月の資金調達では、Bill Gates氏が率いるクリーンエネルギーのエコシステム構築を進めるBreakthrough Energyの投資部門が$100m(約145億円)を出資。また、スイスの商品取引会社であるMercuriaがFervoへの融資枠を$60m(約87億円)増枠するなどにより、柔軟に利用できる資金を確保した。

これらは、ケープステーション建設のために利用する。

現在、Donald Trump米大統領はBiden前政権の環境保護政策を否定する動きを見せる。

しかし、TechCrunchが今回の資金調達を報道したところによると、地熱発電はAIデータセンターのための有望な発電方法の一つであり、こうした環境下でも多額の資金確保が実現できた背景にあるようだ。OpenAIやソフトバンクグループなどが進めるAI関連の計画「Stargate」には、Trump氏も前向きな姿勢を見せている。

参考記事:AIスタートアップと著名企業のパートナーシップ|最近の事例をレビュー

FervoのDavid Ulrey CFOは、「投資家の皆様がFervoとケープステーションに抱く信頼は、次世代地熱発電が米国のエネルギーの未来において決定的な役割を果たすことの裏付けである」とコメントした。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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