SpliceBioがシリーズBで194億円を調達。スペインで遺伝子治療薬・治療法を開発するスタートアップ

スペインでタンパク質スプライシングプラットフォームを開発するSpliceBioは2025年6月11日、シリーズB資金調達ラウンドでの$135m(約194億円)の確保を発表した。
同社は2012年設立。Miquel Vila-Perelló共同創業者兼CEOが米プリンストン大学で研究したタンパク質スプライシングを、技術的な基盤とする。
遺伝子を切り出しあらためて配列する技術
研究開発が進む遺伝子治療で、治療用の遺伝子の運搬体として有望視されるアデノ随伴ウイルス(AAV)というものがある。「アデノ」「ウイルス」という字面を見ると、人の目を腫らす、発熱させるウイルスをイメージするかもしれない。
しかし、AAVはあくまでもアデノウイルスに随伴することで複製が可能なものであり、人体には無害だ。アデノウイルスとAAVは、別のウイルスとなる。また、AAVの人体に対する安全性が、運搬体として有望視される理由となっている。
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こうしたAAVのデメリットとなるのが、運搬できる容量(パッケージング容量)に限りがある点。AAVが運べる容量は4.7キロベースである。1キロベースは塩基1000個分となる。
キロベースといわれてもイメージが湧きづらいが、SpliceBio が治療法確立に取り組んでいる眼の疾患、シュタルガルト病に触れれば、パッケージング容量の感覚がつかめそうだ。シュタルガルト病の原因となるのは、ABCA4という遺伝子の変異。ABCA4は6.8キロベースで、AAVのパッケージング容量である4.7キロベースより大きい。
なおシュタルガルト病は、こうした遺伝子の変異による網膜疾患。中心視力の低下が進行していき、失明に近い状況となるケースもある(ただし、周辺視力は維持される場合が少なくない)。そして、治療法が確立していない病気でもある。
SpliceBioはSB-007という遺伝子治療薬で、シュタルガルト病に対抗。そして、運搬体となるAAVより遺伝子のサイズが大きいという課題は、前出のVila-Perelló CEOやSilvia Frutos共同創業者兼CTOが研究してきたインテイン、タンパク質スプライシングで解決する。
これらは、端的にいえば遺伝子を切り出しAAVで運搬可能なサイズにして、送達後にあらためて配列する技術。それを活用したSB-007は、すでに米食品医薬品局(FDA)の承認を受け、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)からは臨床開発の規制承認を受けている。
2025年3月には、SB-007を試験において患者に投与したと、SpliceBioは発表した。
RocheのCVCが参加
シリーズBは、ヘルスケアに特化した投資会社、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。また、製薬大手のRocheのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である、Roche Venture Fundも参加した。
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資金は、SB-007の臨床開発に使われる。
Vila-Perelló CEOは、次のようにコメントした。
「今回の資金調達は、シュタルガルト病治療薬SB-007の臨床開発を進め、眼科、神経科など幅広い領域でパイプラインを拡大していく上で、SpliceBioにとって極めて重要な節目となる。
投資家からの支援は、当社のプログラムと独自のタンパク質スプライシングプラットフォームの強み、そして現在治療不可能な疾患に対する遺伝子治療の可能性を裏付けるものだ。私たちは、遺伝子治療の次世代をリードする企業を築き上げていく」
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