製造現場にフィジカルAIを実装するStandard Botsが2億ドル調達
米ロボティクス企業Standard Botsは、シリーズCラウンドで2億ドルを調達した。ラウンドはRoboStrategyが主導し、既存投資家のGeneral Catalystなども参加。調達後の評価額は10億ドルに達した。同社はニューヨーク州Glen Coveを拠点に、米国製のAIネイティブ産業ロボットを設計・組み立てる企業だ。
同社が開発するのは、製造現場向けのAIロボットアームや産業用ヒューマノイド。顧客にはSunoco、Lockheed Martin、Amazon、NASA、米陸軍のほか、米国各地の中小製造業も含まれる。今回の資金を使い、Glen Coveの製造拠点を7万平方フィートに拡張し、量産体制を強化する。
専門家不要で現場で使えるAIロボット
今回のポイントは、単なるロボット企業の大型調達ではない。同社が狙うのは、産業用ロボットを「専門家がプログラムする機械」から、「現場作業者が教えて使うAIツール」へ変えることだ。これまで専門人材に依存していたロボット操作を、より現場に近いレイヤーへ開放する試みである。
従来の産業用ロボットは、導入時にロボットSIerや制御エンジニアによる個別設定が欠かせなかった。そのため、大企業の定型工程では活用が進んだ一方、多品種少量生産や中小工場では導入ハードルが高かった。
同社は、この壁をAIで下げようとしている。作業者が「この部品をこう持つ」「この面をこう磨く」と実演することで、ロボットが工程を学ぶ。専門家を不要にするのではなく、専門家でなければ扱えなかったロボットを、現場の人にも開放する点に意義がある。
実演することでAIに学習させることが可能
主力製品のCoreは、6軸の産業用ロボットアームだ。公式ページでは、価格は3万7,000ドルから、可搬重量は18kg、リーチは1.3m、繰り返し精度は±0.025mmとされている。用途は、CNC機械への材料投入、パレタイジング、溶接、研磨、搬送、組立、検査など、製造現場の腕作業が中心だ。
特徴は、ハードウェア単体ではなく、ソフトウェアとAIを一体で設計している点にある。Coreはタッチスクリーンによるノーコード操作に対応し、I/O信号でバイスやCNCドアを開閉したり、機械側の完了信号を受け取ったりできる。オプションのビジョン機能では、対象物の位置検出やピック、機械画面の読み取りにも対応する。
最も重要なのが、デモンストレーション学習だ。同社は、タスクを実演すると、学習モデルを使ってロボットが自律実行すると説明している。つまり、ロボットの動作をコードで細かく記述するのではなく、人が実際の作業を見せることで教える。ロボットを「プログラムする」から「教える」へ変えるのが、同社の技術的な核心だ。
現場データを起点に完全自律化を目指す
同社のEvan Beard共同創業者兼CEO兼チーフエンジニアは、AIネイティブロボットを「21世紀の必須パワーツール」と位置付ける。同氏は、AIによって産業用ロボットが従来よりはるかに多くのタスクを自律実行できるようになり、ロボットは実演から学ぶようになると述べている。
Beard氏はまた、完全自律化への最短ルートは、実際の現場に導入し、リアルワールドデータを集め、素早く改善を重ねることだと説明している。同社は部品の多くを自社設計し、アクチュエータも内製、最終組立も社内で行う。2027年までに、金属材料から完成ロボットまでを米国内で製造する体制を目指す。
投資家側も、同社の強みを「使いやすさ」と見ている。RoboStrategyのAndrew Kang CEOは、同社が専門的なプログラミングなしに工場で使えるロボットを実現している点を評価。General CatalystのMax Rimpelパートナーも、ロボットの民主化はすでに米国の工場で起きていると述べた。今後の焦点は、実演で学ぶロボットが、変化の多い実際の現場でどこまで汎用性を発揮できるかにある。
参考文献:
※1:Standard Bots Raises $200 Million Series C at $1 Billion Valuation to Scale American-Made, AI-Native Industrial Robots( リンク)
※2:同社HP( リンク)
【世界のフィジカルAIの動向調査やコンサルティングに興味がある方】
世界のフィジカルAIの業界動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。
先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら
CONTACT
お問い合わせ・ご相談はこちら