ニュース記事

自動運転車の運用基盤を構築するMooveが2.5億ドル調達 トヨタ系ファンドが共同主導

UAEに本社を置くMooveは、自動運転車や配車サービス向けに、車両の保有・運行、充電・整備拠点、24時間の管理システムを一体で提供する2020年設立の企業である。Waymoの提携先として、フェニックスとマイアミで自動運転車群の運用を担う。

同社は2026年8月5日、シリーズCで2億5,000万ドルを調達し、評価額は21億ドルとなった。Mubadalaが主導し、トヨタのグロースファンドであるWoven CapitalとIon Pacificが共同主導した。資金は自動運転車の保有、運用拠点の整備、新都市への展開に充てる。

自動運転の普及を左右する「走行外」のインフラ整備

自動運転車を商用サービスとして広げるには、走行技術だけでなく、車両の調達、充電、点検、清掃、整備、配車を都市ごとに休みなく回す必要がある。同社はこれらをまとめて引き受け、車両が走れない時間を減らす運用基盤を構築する。調達後は自動運転部門を年末までに約150人から約500人へ増やす計画である。

同社は有人の配車サービスで、13カ国29都市に約4万2,000台を展開し、年間経常収益(ARR)4億2,000万ドルへ成長したと説明する。この既存基盤を自動運転へ転用することで、実証車を少数動かす段階から、都市単位で多数の車両を安定運行する段階への移行を狙う。

当社メディアでも以前、Waymoなどロボタクシーの社会実装とコスト課題を取り上げた。今回の調達では、Woven Capitalが共同主導したほか、MUFGも既存投資家に名を連ねる。Mooveは国内のTokyo Taxiも買収済みであり、日本企業との資本・事業上の接点が複数ある。

車両状態と拠点作業を束ねる24時間の運行制御

同社の技術は、自動運転の認識・判断を行うソフトウェアではなく、車両群をサービス可能な状態に保つための制御基盤である。充電残量、点検や清掃の必要性、稼働状況などを把握し、配車と拠点作業を調整する。公式サイトはAIによるリアルタイム監視と最適化を掲げるが、使用するセンサーやアルゴリズムの詳細は公表していない。

専用拠点では、充電、検査、整備、清掃を高い処理能力で行い、車両を再び運行へ戻す。多数のロボタクシーが出入りする場合、充電器の空き、整備の優先度、次の配車時刻を同時に扱う必要がある。同社はロボット活用を前提とした拠点設計により、人手を介する工程と待機時間の削減を目指す。ただし、自動化設備の構成や無人化の範囲は未開示である。

都市側の管制では、車両の稼働率を監視し、異常時の対応や整備工程を24時間調整する。Waymoとの契約では、同社が車両運行、施設、充電を担当し、Waymoは自動運転技術の検証と運用を担う。この分業により、自動運転企業は走行システムへ集中しながら、都市展開に必要な物理インフラを外部化できる。

車両保有と都市展開を支える運用会社への転換

同社は調達資金で、自動運転車群の保有と運用拠点を拡大し、新たな都市へ進出する。Waymoとの運用はフェニックスとマイアミで始まり、ロンドンも予定される。一方、日本での自動運転事業や、Woven Capitalとの具体的な協業内容は発表されていない。

共同創業者兼共同CEOのLadi Delano氏は、自動運転には車両、充電、整備、データシステム、24時間運用が必要であり、インフラの保有と運営が競争力を左右すると説明した。Woven CapitalのBetty Lee氏も、自動運転の次の波はソフトウェアと同じくインフラの課題であると評価している。


参考文献:

※1:Moove Raises $250 Million at $2.1 Billion Valuation to Scale the Global Infrastructure Layer for Autonomous Mobility( リンク

※2:Moove Partners with Waymo to Redefine the Future of Urban Mobility(リンク

※3:MUFG Innovation Partners invested in Moove.リンク

※4:同社HP( リンク



【世界の自動運転技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】     

世界の自動運転の業界動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら