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3Dプリントサービスを提供するCarbonが6000万ドルを調達

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Carbon, Inc. はカリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とする3Dプリント企業である。独自のポリマー材料、3Dプリントハードウェア、設計・製造ソフトウェアを統合したプラットフォームを提供し、複雑形状の部品を高品質で量産できる点が特徴である。スポーツ用品、医療、産業向け部品など幅広い分野で採用が進み、従来製造では実現しにくい設計自由度と短納期を両立する製造技術として注目されている。

2025年11月、既存投資家である Sequoia Capital、adidas、Silver Lake、Baillie Gifford、Madrone Capital、Northgate Capital などが参加するラウンドで6,000万ドルを調達した。資金は生産能力の拡大、プロセス効率の改善、次世代機器および材料開発に充てられる。同社は今回の調達を、キャッシュフロー黒字化と持続的成長に向けた重要な節目と位置づけ、産業のデジタル製造化をさらに前進させる方針を示している。

3Dプリントの新たな供給モデルを構築

製造業では、従来の金型・射出成形を中心とする大量生産モデルの枠組みが限界を迎えている。特に3D印刷などのアディティブ・マニュファクチャリング(AM)分野では、「量産性」「コスト競争力」「品質の一貫性」が十分に確立されておらず、用途拡大の障壁となっている。さらに、地域再工業化やオンデマンド生産を実現するためには、従来型の生産設備のままでは対応が難しく、新たな供給モデルの構築が急務となっている。

同社は、材料、ハードウェア、ソフトウェアを一体化したプラットフォームを構築し、3Dプリントを「試作」から「量産」へと推し進めている。生産ボリュームの拡大、プロセス効率の改善、大手ブランドとの共同開発を通じて、供給安定性と品質確保を同時に実現。その結果、部品設計の自由度を高めながら、製造コストと納期の改善にもつなげている。

高品質量産を実現する材料・装置・ソフトの総合技術

同社は高性能ポリマー材料、専用3Dプリンタ、製造支援ソフトウェアを統合した独自プラットフォームを構築している。これにより、設計から量産までの流れを最適化し、従来の製造方式では困難だった複雑な形状部品を効率良く製造可能としている。設計自由度を高めつつ、製造工程の一貫性を確保することで、実用部品の量産化を可能にしている。

量産を前提とするため、製造プロセスの高速化・自動化、材料の再利用性、ワークフローの効率化を進めている。これによって、いわゆる“試作用3D印刷”から脱し、従来量産方式と競えるコスト構造と生産スケールを目指している。オンデマンド生産や地域分散型製造にも対応できる体制を備えている。

同社の技術は、消費財(スポーツ用品)、医療・歯科、産業部品といった幅広い用途で実績を積んでいる。たとえば大手ブランドとの提携により数百万件規模の部品生産を達成し、信頼性が実証されている。また、材料・装置・ソフトの統合アプローチにより、用途ごとの設計や製造条件への適応力も高めており、製造現場の多様な要件に応える基盤技術となっている。

生産拡張と製造プロセスを改善し黒字化を目指す

同社の共同創業者兼 CEO Phil DeSimone 氏は「我々は優れた製品ポートフォリオと信頼できる供給パートナーを構築してきた。今回の資金調達を通じて、デジタル製造の可能性をさらに広げ、産業の製品化プロセスを再定義できる立場にある」と語っている。調達資金は生産能力拡大と製造プロセスの効率改善に投入され、キャッシュフロー黒字化達成を目指している。

また、Sequoia Capital パートナーである Jim Goetz 氏は「同社の印刷技術、専有樹脂、設計力に加え、複数の産業での実績が、その次のデジタル製造時代を牽引する位置に同社を置いている」と述べている。同社はオンデマンド製造や地域分散型の製造モデル構築を通じて、製造業の変革を支える存在として今後の役割を強化する方針である。

同社はデジタル製造の主役として、量産性と柔軟性を兼ね備えた新たな生産モデルを推し進めている。次世代の製造業を形づくる存在として、今後の動向が注目される。

参考文献:
※1:$60M Raise Accelerates Carbon in the Advanced Manufacturing Race(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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