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光集積チップを開発するScintil Photonics、AI向けの事業拡大のため5,800万ドルを調達、NVIDIAも出資

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フランス・グルノーブルを拠点とするScintil Photonicsは、AIデータセンター向けの集積フォトニクス技術を展開する企業である。

2025年9月、同社はシリーズBとして5000万ユーロ(約5800万ドル)の資金調達を実施した。主導はYotta Capital PartnersとNGP Capitalで、NVIDIA、BNP Paribas Développement、Supernova Invest、Bpifrance Digital Venture、Innovacom、Bosch Ventures、Applied Ventures/AVITICなどが参加している。

光集積チップで拡張性と効率を両立

AIモデルの巨大化に伴い、GPU間をつなぐデータ転送量が急増している。従来の銅配線では帯域幅の限界や発熱、電力消費の増大が問題となり、大規模AIインフラの拡張を阻む要因となっていた。また、複雑化するネットワーク構成により、システム全体の効率低下やコスト増大も顕在化している。こうした課題を解消するためには、高速かつ省電力な新しい通信技術が求められていた。

同社は、光を用いた通信チップをシリコン上に集積する技術を開発し、データ転送のボトルネックを解消する。光信号により高帯域・低遅延の通信を実現し、電力消費も大幅に削減できる点が特徴。複数の光素子を1枚のチップに統合することで量産性を確保し、AIデータセンター向けに実装可能な光インターコネクトを提供する。これにより、拡張性と効率を両立したAIインフラを実現することを目指している。

光でつなぐ次世代AIインフラ

同社の独自プロセス「SHIP™(Scintil Heterogeneous Integrated Photonics)」は、シリコンフォトニクス上にレーザー、フォトダイオード、変調器などをモノリシックに統合する異種集積技術である。これにより、従来は別々に構成されていた光部品を1枚のチップに収め、性能・効率・生産性を同時に高めている。

主力製品の「LEAF Light™」は、DWDM(高密度波長分割多重)に対応する単一チップ光エンジンで、多波長レーザーを精密に制御・集約。1mmあたり6.4 Tbpsの帯域密度を実現し、従来モジュールの約1/6の消費電力で動作する。AIクラスタやGPU間の光接続に最適化されており、CPO(コパッケージド光学)への展開も見込まれている。

グローバル展開と量産体制の強化

調達資金をもとに、同社は米国を中心としたグローバル市場への拡大を進める。グルノーブルにおける研究・開発拠点の拡充に加え、設計・生産・カスタマーサポート人材の採用を加速。AIファクトリー時代に向け、光インターコネクトの量産化と標準化を目指す。


参考文献:
※1:Scintil Photonics Raises $58M to Scale Integrated Photonics for AI Factories(リンク

※2:同社公式HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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