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電気刺激による中枢神経系の治療を目指すNeuraWorxがシードラウンドの資金調達を完了

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NeuraWorx Medical Technologyは、米国発のニューロテクノロジー・スタートアップで、中枢神経系(CNS)疾患を対象としたバイオエレクトロニクス治療を開発している。脳血管およびグリンパティック系の機能に着目し、電気刺激によって脳内環境の調整を図る独自プラットフォームを構築。薬物療法に依存しない新たな治療アプローチの確立を目指す。

同社は、当初の想定額を上回る投資応募を集め、シードラウンドの資金調達を完了した。神経系テクノロジー分野に特化したNexus NeuroTech Venturesが主導し、複数のヘルステック系投資家が参画した。調達した資金は、研究開発体制の強化や人材採用に加え、初期の臨床試験および規制対応に向けた準備に充てられる予定だ。

治療が難しいCNS疾患に対し、脳内流体循環機構の観点からアプローチ

神経変性疾患などのCNS疾患では、脳内の老廃物除去や流体循環の低下が病態進行に関与すると指摘されている。特に加齢や疾患により、脳血管のリズム運動やグリンパティック系の機能が弱まることが課題だ。こうした生理機能の低下に対し、既存の薬物療法では十分な介入が難しい状況が続いている。

同社は、脳の生理的な流体循環機構そのものに着目し、機能低下の改善を図るアプローチを採る。電気刺激を用いて脳血管のリズムを整え、脳内環境の恒常性維持を促すことで、疾患進行の抑制を目指す。症状対処型ではなく、脳機能の基盤に働きかける点が特徴だ。

脳血管リズム運動制御技術を開発

同社は脳血管の自律的なリズム運動(vasomotion)と、脳内老廃物の排出を担うグリンパティック系に着目している。これらの生理機構は、脳内の流体循環を支える重要な要素であり、加齢や疾患によって機能が低下すると、神経変性疾患などの病態進行と関係する可能性が示唆されてきた。同社としては、この循環機能の低下を治療介入が可能だと考えている。

同社が開発する「Intelligent Cerebrovascular Pacing™」は、電気刺激を用いて脳血管のリズム運動を調整し、血流および脳脊髄液の動態に働きかけるバイオエレクトロニクス技術である。神経細胞そのものを直接刺激するのではなく、脳内環境を支える物理的・生理的プロセスを整えることで、グリンパティック系機能の改善を図る設計となっている。

このアプローチは、分子標的や症状緩和を中心とする薬物療法とは異なり、脳の基盤的な機能維持に介入する点に特徴がある。また、従来の神経刺激治療とも作用点が異なり、より広範な脳内環境の調整を志向している。同社は、こうした生理機構ベースの介入が、新たなCNS治療の方向性を示すと位置づけている。

臨床フェーズ移行に向け、開発・体制を強化

同社は今後、研究段階にあった技術を臨床応用へと進めるフェーズに注力する方針だ。シードラウンドで集めた資金を活用し、初期臨床試験の設計や規制当局との対話を進めることで、安全性および有効性の検証を本格化させる。基礎研究に基づく仮説を、客観的な評価指標を用いて臨床データとして示すことが、当面の重要なマイルストーンとなる。

あわせて同社は、開発体制の強化と専門人材の拡充を進め、長期的な事業成長に備える。特定疾患に限定せず、脳内流体循環機構の関与が示唆される複数のCNS領域への展開も視野に入れる考えだ。非薬物型ニューロテクノロジーとしての位置づけを明確にしつつ、将来的な適応拡大と事業価値の最大化を目指していく。


参考文献:
※1:NeuraWorx Closes Oversubscribed Seed Round Led by Nexus NeuroTech to Advance Neurotechnology Therapy for CNS Disordersリンク

※2:同社HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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