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CES2026 ~自動運転の進化と社会実装本格化の考察~

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CES2026ではこの数年、毎年自動運転についてその進展が注目されたが、水面下での実証のフェーズが長く続き、中々その進捗を感じることが難しかった。

しかし、ついに自動運転は社会実装本格化のフェーズに入る。

すでに多くのメディアで、試乗をしたレポートなどもあるが、Waymoを始めとして、中国ではすでに多くの台数が実際にサービスとして一部都市でローンチされており、人々の生活の足として根付き始めている。

自動運転に関して、今回のCES2026で感じたことを紹介・考察していく。

Zooxの試乗レポート

ついに試乗できるようになったZoox

米国の自動運転スタートアップで、2020年にAmazonによって買収されたZooxが、ついにラスベガスで一般に乗ることができる形で公開。現時点では無料で試乗ができる。

事前に調べていた情報では、アプリをダウンロードしたら利用ができそうだ、ということで、現地でアプリをダウンロードしようとしたら、Google Playの居住地登録が米国でないと利用できない模様。

Google Playの変更はかなりハードルが高いようで、簡単ではなかったので、直接Zooxのブースに行ってみたら、試乗の申し込みができた。CESの会場からはやや離れた場所であったが、さすがに多くの人が乗車体験を待っている。当方は約30分ほど待って、乗車することができた。

ブースでZooxの社員に質問をしたら、厳密には言及はできないとのことだったが、数十台が現在稼働しているという話であった。

ラスベガス中心街を周回するルート

ルートはラスベガスの中心街をぐるっと一周するルートであり、おおよそ35分程度の乗車時間である。アプリを利用できる場合は、街中に数か所あるZooxのスポットで降りたりすることもできるようであるが、アプリがない場合には、一周周回ルートとなる。

さて、肝心の乗車体験はどうだったのかというと、まず街中を全く問題なく、自然に走行していた。

周回固定ルートではあるが、ラスベガスの中心街であり、車通りは非常に多い。また周囲に車が多い中でも車線変更を複数回行っており、それでも怖さは全く感じなかった。最初こそ、その車両挙動には非常に気を張ったが、徐々に慣れていき、途中からリラックスして乗車を楽しんでいた。遊園地のアトラクションに乗っているような気分である。

驚いたのは、かなりのスピードで走行していた点。ラスベガスの中心街の直線ルートでは、一般にドライバーはかなりのスピードを出す。実際に何km/hの速度が出ていたのかは、車両の設計上インパネがないためわからないのであるが、かなりのスピードを出して運転する周囲の人間のドライバーと遜色ないスピードを出して走行していた。

自動運転の酔い問題

しかし、課題もある。

課題は「酔い」である。これは2つポイントがあり、車の制御(運転のスムーズさ)から来る酔いと、4人で向かい合って座るため、進行方向に対して後ろ向きになって座る人がいるという点である。

前述のとおり、危険は感じていないのだが、加速・減速はやや荒く感じ、特に車線変更の際には、かなり体を振られる感覚が残る。米国(・・・に限らず日本でもそうだが)では、タクシードライバーの運転も荒いと感じることが多いため、かならずしもZooxが突出して悪いということではない。しかし、約35分乗車して、やはり運転は荒いなという感覚は残った。


そして、こうした状況であるため、もし仮に4人フルで乗ったときに進行方向に対して後ろ向きに座ろうものなら、車酔いしやすい筆者は完全にアウトである。後ろ向きの座席には絶対に乗りたくない。これはユーザー体験上、課題として残る点であると感じた。

ルートにはたくさんのZoox車両が走っていた

現在は同じルートを周回しているだけであるため、自動運転小型バスという感じである。固定ルート周回のため、車内から外を見ると、ほかにも周囲にZooxの車両が走っているのを見ることができた。

Zooxが正式なサービスインされるタイミングで、完全自由ルートのタクシー型になるのか、人が多いルートを結ぶバス型になるのか、どちらなのかはわからないが、いざ需要と安全性が確認されたら一気に車両が配備されてもおかしくない。

Zooxはギリギリの戦いではないかと思う

さて、Zooxはついにラスベガスで一般試乗ができるような形になったが、一般試乗に至るまではかなり苦戦してきた印象である。

数年前から展示は出ていたが、ずっと試乗はできず、一方でWaymoはその間に複数のエリアで配備車両を着々と増やしてきた。中国でも多くの自動運転車両が走行している状態である。GM Cruiseは事故をきっかけに混乱の中、撤退を表明した。

自動運転の開発には多大な資金がかかる。Amazonの資本があれど、Zooxがこのタイミングで一般試乗に至ったというのは、生き残りに向けてギリギリのタイミングなのではないかというのが個人的な見解である。

この遅れは主に技術面から来ており、Waymoに比べてその自動運転システムの完成度はかなり遅れているという認識だ。Zooxは一般公道では長い間、実機ではなく、LiDARなどのセンサを搭載した乗用車をデータ蓄積のために利用してきた。実機での公道走行データの蓄積はまだそこまで多くないのではないかと思う。

そしてシステムの完成度は、そのまま先ほどの運転のスムーズさ=酔いやすさにも直結する。筆者と同乗していた米国在住の専門家は、「Waymoの方が圧倒的に乗り心地が良い」とコメントしている。

参考までに、現在の公道での稼働台数について、今回のCES2026で確認できた情報を並べておく。Zooxの数十台というのはラスベガスに限定した話であるため、完全に横並びでは比較できない点は注意が必要である。しかし、複数サイトで実証実験しているのを踏まえても、100台は行かないのではないかと考える。

・Waymo 2,500台程度 対象:世界複数エリア

・Zoox 数十台 対象:ラスベガス

・VW Autonomous Mobility 100台以上 対象:世界複数エリア

車両のデザインや4人乗りのライドシェアというコンセプトがどれだけ差別化要素に繋がるかは現時点では未知数だ。

今年の夏にはWaymoもサービスインされると報じられている。来年のCESでは展示ではなく、固定ルートでもなく、実際に街中でロボタクシーが乗れるように進展する可能性も十分期待される。

Volkswagenは2033年末までに10万台のロボタクシーを配備すると言及

Zooxとは別に、今回MobileyeのプレスカンファレンスにVolkswagen Autonomous Mobilityというフォルスワーゲンの自動運転部門のCEO Christian Senger氏が参加。

同氏はMobileye CEOのAmnon Shashua氏との対談の中で、こう語る。

「2027年末までに世界6都市、2033年までに10万台以上の自動運転車が路上を走ることになるでしょう」

画像はMobileyeのプレスカンファレンス公開動画より











ここまで具体的に将来の自動運転車の配備数に言及したのは、近年中々珍しい、非常にインパクトのある数字である。

ロボタクシーは長年、ハイプサイクルを繰り返してきた。その中で過去にはL4自動運転車両がすぐに大量に配備されるような楽観論もあったが、すべて淘汰されてきた。10万台という具体的な数字は、本格的な社会実装フェーズに入ってきているからこそ、発言できるコメントだろう。

L4乗用車から社会実装を狙うTensor

Tensorという会社をご存じだろうか。

2016年に米国で設立された中国系スタートアップのAutoXを出自とした企業である。AutoXは非常に期待されたロボタクシー企業であり、深圳郊外に1,000台以上のロボタクシーを配備。毎年の自動運転の技術の発表についても、最先端の取り組みを発表し話題になっていたものである。

そのAutoXは中国での事業を全て縮小し、オフィスを閉鎖し、AutoXブランドを廃止した。

そしてリブランドされてできたのがTensorである。

Tensorは従来のアプローチとは異なり、ロボタクシーではなく、一般消費者向けのL4自動運転乗用車を販売する戦略を取る。











車両はLVCCにも展示されていたが、FontaineBleauにあるNVIDIAのブースでも確認できた。

LiDAR・カメラ・レーダーを備えた完全にフルスタックのセンサ車両である。

ブースで少しだけ話を聞くことができたが「ターゲットは富裕層であり、ラグジュアリーカーの位置づけ。最初のエリアはドバイから始める」ということであった。

個人向けL4とは、非常にチャレンジングな取り組みである。2030年頃までにロボタクシーが普及し始め、2040年頃に向けてこうした個人向けL4も高級セグメントで出てきてもおかしくない、と思っていたが、一足飛びに個人向けL4から始めるという斬新なアプローチだ。

ただし、どうしてもHDマップ作成とローカルでのエッジケースのつぶしこみは必要だと想像するため、ドバイやシンガポールなどのエリアが比較的限定された国はまだ実現しやすいだろう。

なお、ブースで確認したところ現在は公道でテスト走行しているのはまだ数台規模ということであった。

自動運転に再チャレンジをするUber








Uberは2026年1月5日、CES2026の期間中に、ロボタクシーに関するプレスリリースを出した。

2025年9月にUberはLUCIDへ300m$の戦略的出資を行う。この時、自動運転SUV「Lucid Gravity」については確かに発表されていた。なお、L4システムについてはNUROの技術を活用する。

NUROは低速の配送用自動運転ロボットの開発を行っていたが、2024年に計画を撤回してピボット。自動車メーカーや配車サービス、配送会社などのモビリティプロバイダーへの技術ライセンス供与に注力してきた。そうした中で、2025年に行われたシリーズEでNVIDIAのVC部門も出資をしている。

・タクシー管理 / システムとサービス Uber

・ソフトウェア定義車両 LUCID

・L4システム NURO

という組み合わせとなる。










車両にはDriven by nuroの文字が見える。










ルーフにはL4ではおなじみのセンサスタックが搭載。カメラとLiDARがあるのが確認できる。LiDARも長く回転式のメカニカルLiDARが利用されてきたが、多くの企業の新しい車両ではソリッドステートLiDAR(または可動部を限りなく小さくしたMEMSやその他方式などの可能性もある)になっているように見える。

FOVがあまりとれないため、四方複数個所に搭載されている。

短距離ならともかく、ルーフの長距離用のLiDARは機械式というのがロボタクシーのエンジニアには愛用されてきたが、測距が伸びてきたことや、車両の運用なども考慮してやはり可動部が少ないLiDARが採用されてきているということだろうか。

Uberは、今後6年間でプログラムを通じて20,000台以上のLucid車両の導入を目指している。

まとめ:ハイプサイクルを超えてAD1.0は実装フェーズへ、その先のAD2.0も期待

ここまで見てきたように、自動運転は複数回のハイプサイクルを超え、ようやく本格的な社会実装フェーズへ入ってきたように見える。この1-2年でエリアをさらに広げ、複数の街で数百台や1,000台などが稼働するような状況が期待される。

今後は、技術を高めながらここまでに完成したシステムのコストを下げていくフェーズとなる。とりわけAI技術の進化による同分野への影響は大きいだろう。

2030年頃からの本格量産時代へ向けて、認識精度を向上させながらもセンサの削減を実現すること、経路計画や制御のモジュールでもAIの活用範囲を広げること、そしてエラーを極力少なくすることで、管制センターでオペレーターが1人で監視できる車両台数をできるだけ多くすることなど、マネタイズに向けて技術を磨いていく。

海外のロボタクシーエンジニアと過去に議論をした時の感触では、数千台などの領域では、今のフルスタックのセンサスイートをできるだけセンサ数削減するトップダウン的な軽量化アプローチでも対応できる。

一方で、数万台や10万台のような大規模配備となると、今のような車両・システムコストは高く、大きく下げていく必要がある。HDマップの構築もそうだ。そうなると、LiDARセントリックのシステムではなく、カメラのみによるスケーラブルなE2Eシステムなどが求められてくる。

米国のあるロボタクシーエンジニアはこの現在のフルスタックのLiDARセントリックな自動運転システムをAD1.0と呼んだ。そして、カメラベースのE2EシステムをAD2.0と呼んだ。

AD1.0とAD2.0はシステムのアーキテクチャが全く異なるため、技術軸は大きく変わる。既存プレーヤーはAD1.0で社会実装を進めつつ、AD2.0時代への仕込みも求められている。

  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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