Lucideanは、データセンター向けの次世代高速通信を実現するコヒーレント光リンク技術を開発する米国スタートアップ。独自技術「CohZero™」により、従来の高消費電力なコヒーレント方式と、低コストだが性能に限界のあるIMDD方式の間にある課題解決を狙う。既存の光モジュールのエコシステムと親和性を保ちつつ、高帯域・低電力な光インターコネクトを提供し、AI・クラウド時代のデータセンター需要に対応する。
同社は、シリーズシードラウンドで約1,800万ドルの資金調達を完了した。本ラウンドはEntrada VenturesおよびKoch Disruptive Technologiesが共同で主導し、Foothill Ventures、M Ventures、Raptor Groupなどが参加した。調達資金は、CohZero™技術の研究開発強化、性能実証、製品化の加速に充てられる。また同時に、光通信分野で豊富な実績を持つJames Raring博士がCEOに就任し、経営体制の強化も図られている。
AI時代のデータセンター通信を支える新技術
AI処理の拡大により、データセンター通信にはさらなる高速化と電力効率の両立が求められている。IMDD方式は低コスト・低消費電力だが帯域や距離に限界があり、コヒーレント光通信は高性能な反面、消費電力や実装コストが導入の障壁となってきた。
同社は独自技術「CohZero™」により、IMDD互換性を維持しつつコヒーレント級の性能を狙うことで、高帯域かつスケーラブルな光インターコネクトの実現を目指している。
既存エコシステムを活かす技術的差別化
同社の「CohZero™」は、IMDD方式に近いシンプルな構成を基盤としながら、光信号の位相情報を活用することで伝送性能を高める設計を採用している。従来のコヒーレント通信で必要とされた大規模DSP処理を前提とせず、性能向上と電力効率の両立を図る点が特徴だ。
また、既存のIMDD光モジュールやネットワークとの互換性を重視することで、段階的な導入やスケールアップを可能にしている。これにより、事業者は大規模な設備更新を伴わずに通信性能を引き上げることができ、AI・クラウド時代のインフラ進化に現実的に対応できる。
実用化を見据え開発体制を強化
同社は今回の資金調達を受け、独自技術「CohZero™」の研究開発と製品化を最優先で進める方針を示している。資金は性能・電力効率の検証を含む技術成熟度の引き上げに充てられ、次世代データセンター向け光インターコネクトとしての実用性を高めていく。
あわせて、新CEOのJames Raring博士のもと、開発体制の強化や人材採用を進め、商用展開に向けた準備を加速する。既存エコシステムとの親和性を活かしながら、市場投入までの時間短縮と段階的な普及を目指す考えだ。
参考文献:
※1:Lucidean Raises Series Seed Funding to Accelerate Next-Gen Coherent Optical Links for Data Centers; Announces Dr. James Raring as Chief Executive Officer( リンク)
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