ドナー臓器を使って新薬候補を試験するスタートアップ、Revalia Bioが1450万ドルを調達

米国のバイオスタートアップのRevalia Bioが、2025年9月4日に、シードラウンドで1,450万ドルを獲得した。同社は、移植に使えないドナー臓器を蘇生(パーフュージョン)し、実際に薬剤を投与して反応を測定することで、人に近いデータを臨床試験前に取得する「ヒトデータ試験(Human Data Trials)」を提供している。
今回の資金調達は、 America's Frontier FundとSierra Venturesが共同で主導し、これには、米連邦準備制度理事会の元副議長でアルファベットの取締役でもあるロジャー・ファーガソン氏や、他の既存の支援者も参加した。また、同社はこれまでにも、機関投資家、エンジェル投資家、友人、家族などからSAFEノートの形で500万ドルのプレシード資金を調達しており、そのうちの一人で神経科学者でもあるミラド・アルーコザイ氏は、事業拡大を支援するために同社に入社している。
医薬品開発におけるドナー臓器を使用した新たなアプローチ
米国をはじめとする医薬品開発では、いまだに前臨床段階のデータが人での結果を十分に予測できず、臨床試験に進んでから失敗するケースが多い。新薬が承認に至るまでには平均15年以上、数十億ドルものコストがかかり、臨床試験の約9割が失敗に終わるという現状がある。動物実験や培養細胞だけでは人間の複雑な生理を再現しきれないことが、その大きな要因とされている。
2023年にイェール大学からのスピンアウトとして事業を開始した同社は、移植不適合のドナー臓器を灌流技術で蘇生し、薬剤を実際に作用させて人間の臓器で起こる変化を観察する「ヒトデータ試験」を提供している。この仕組みにより、臨床試験より前に確実な判断ができ、薬剤開発のリスクとコストを大幅に削減できる可能性がある。同社は、このアプローチを動物実験の次のステップと位置づけ、製薬企業がより早く、安全に、患者に新薬を届けられる未来を目指している。
学術研究の知見を基盤に独自の灌流技術を開発
同社の「ヒトデータ試験」は、移植に使えないドナー臓器を専用の灌流装置で蘇生し、生理的状態を再現したうえで薬剤を投与し、人に近い応答データを取得する点が最大の特徴だ。灌流技術によって臓器の血流や酸素供給、栄養環境を制御し、数時間から数日にわたり機能を維持することが可能となる。これにより、臓器レベルの機能、分子マーカー、病理組織、イメージングなど多層的な情報を同時に取得でき、従来の動物実験や培養細胞では再現が難しいヒト特有の反応を観察できる。
共同創業者で生物物理学者のティッチェン氏は、元イェール大学助教授として灌流科学に特化した研究室を率い、2023年に同社の立ち上げに合流。学術研究の知見を基盤に、人を対象としたデータ駆動型試験という新しいアプローチを実装した。
こうした技術により、薬の安全性や薬物動態の予測精度を高め、臨床試験に進む前により確実な意思決定を可能にし、開発コストと失敗率の低減を目指している。
今後は医療機器テストや新たな疾患領域にも応用範囲を拡大していく方針
同社は現在、腎疾患と腫瘍領域を対象にヒトデータ試験を実施しているが、今後は医療機器テストや新たな疾患領域にも応用範囲を拡大していく計画だ。
共同創業者でCPOのJenna DiRito氏は「ヒトデータ試験を既存の臨床試験の伴走者として拡大し、適応型試験デザインをよりよく支援できる統合データを提供したい」と語り、臨床試験の柔軟性と応答性を高めることを目指している。現在、統合データプラットフォームのβ版を立ち上げており、薬剤の安全性・投与量・有効性に関する“意思決定可能なエビデンス”を、患者にリスクを負わせることなく提供することを狙っている。
CEOのGreg Tietjen氏も「10年かかるタイムラインと90%の失敗率という旧来の開発モデルは持続不可能だ」と指摘し、ドナー臓器を活用した新たなパラダイムで創薬プロセスそのものを刷新する意欲を示している。
参考文献:
※1:Exclusive: Revalia Bio Raises $14.5M To ‘Revolutionize’ Drug Development With Human Data Trials( リンク)
※2:同社公式HP(リンク)
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