インプラント開発の米restor3dが56億円を調達。先進的造形技術「LPBF」を活用

整形外科向けの先進的なインプラントを開発する米国のスタートアップ、restor3dは2025年4月4日、$38m(約56億円)の資金調達完了を発表した。
restor3dは、2017年に設立。ノースカロライナ州に拠点を有する。
チタン、コバルトクロムの粉末材料でオッセオインテグレーションを実現
人間が生まれつき備えている骨を代替するためのインプラントは従来、平均値を基につくられるケースが多く見られた。しかし、人間は当然、個々人で身長や体重が異なり、骨の大きさも平均に近い人がいればそうでない人もいる。
こうした課題を前にrestor3dは、3Dプリントによるインプラントの製造方法を開発。個々の患者に対応したインプラントの製作につなげる。また、AIドリブンによる設計で、高精度、高効率な製造プロセスも実現する。
もっとも、ここまでは現代のテック系スタートアップとして、さほど目新しくないかもしれない。
restor3dの技術的強みは、オッセオインテグレーションへ導く点にある。オッセオインテグレーションとは、整形外科において人間にインプラントを移植した後、インプラントと天然の骨とが結合し、強度が増すことだ。
オッセオインテグレーションへと意図的に導くため、restor3dは「TIDAL Technology」と呼ばれる技術を開発した。なお、restor3dはこの名称を商標登録している。
TIDAL Technologyでは、Ti6Al4V ELIというチタン、もしくは、コバルトクロム合金を利用。これらの粉末を、レーザー粉末ベッド融合(LPBF)でインプラントにしていき、オッセオインテグレーションへ仕向ける。
LPBFは3Dプリンティングにおける先進的な造形方法であり、高精度のプロダクト製作が求められる航空宇宙分野でも活用される技術だ。
restor3dは新製品を続々と投入。3月から資金調達発表直前の4月1日にかけて、足首インプラントの「Ossera」、全膝関節置き換えの「iTotal Identity」が米食品医薬品局(FDA)の承認を得たと、相次いで発表した。
「営業CFのプラス化が近い」と説明
2025年4月の資金調達は、米国の資産運用会社が主導した模様。資金は、前出のOssera、iTotal Identityの他、肩関節疾患患者向けインプラント「Veritas」、ビタミンEと高度架橋ポリエチレンを含んだ軟部組織インプラント「Kinos Total Ankle System」といった4商品を商業化するための生産ラインに使われる。
Kinos Total Ankle System(rector3dプレスリリースより)
資金調達を終えての経営陣からのコメントは、発表していない。一方、資金調達を伝えるプレスリリースの文中には、「営業キャッシュフロー(CF)のプラス化に近づいて」いるとしており、スタートアップとして財務的に攻めの姿勢から安定企業へと移る過渡期であることがうかがえる。
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