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量子コンピューティングのQuantinuumが6億ドルの資金調達を発表、製品投入に向けた開発を加速

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米国の量子コンピューティングスタートアップのQuantinuumが、2025年9月4日に、6億ドルの資金調達を実施したことを発表した。

今回の資金調達ではNVIDIAのベンチャーキャピタルであるNVenturesや、台湾のPCメーカーであるQuanta Computer、フィンテック専門の有力VCであるQED Investorsが新規投資家として加わり、既存株主であるJPMorgan Chase、三井物産、Amgen、Cambridge Quantum Holdings、Serendipity Capital、そしてHoneywellが追加出資を行った。

ハネウェルの量子コンピュータ部門と英国スタートアップの合併でできた企業

Quantinuumは、元々は2021年にHoneywellの量子コンピューター部門であるHoneywell Quantum Solutionsと、英国の量子ソフトウェアスタートアップのCambridge Quantumが合併して設立された企業である。ハネウェルが開発していた量子コンピュータのハード面と、Cambridge Quantumが開発していたソフトが組み合わさり、ハードとソフトが補完された企業であると言える。

Honeywellの豊富な資金・リソースをバックに、合併時の段階ですでに400名以上の従業員を抱え、そのうちの約300名は量子科学者とエンジニアで構成される開発体制を構築。製品化に向けて開発を加速している。

イオントラップ型量子コンピュータ

同社が開発を進める量子コンピュータは、イオントラップ型と呼ばれる方式である。

高真空環境下で原子イオンをレーザーで冷却してノイズに強い高品質な量子ビットを生成、制御された電磁場を用いて荷電粒子を自由空間内に閉じ込めて保持する。Quantinuumのほかには、IonQなども同方式で有名なベンチャー企業だ。

同方式は量子状態を維持しやすく、計算精度が高いと言われている。一方で、量子ビットを精密に操作する必要があり、大規模化することが難しいという課題があった。Quantinuumは、量子コンピュータの大規模化と誤り耐性の両立を狙い、開発を進めている。

2030年頃までに実用的な量子コンピューティングを実現

2025年4月には、同社は米国DARPAとの協業を発表。同局の量子ベンチマークイニシアチブの第一段階に参加する企業へ選定された。このプログラムは、2033年までに産業的に有用な量子コンピュータを構築する実現可能性を評価することを目的としており、ステージがA~Cへと進んでいく。

Quantinuumは2024年9月に発表した開発ロードマップで、2030年までにユニバーサルかつ完全なフォールトトレラントな量子コンピューティングを実現するとしており(図では2029年となっている)、実用化に向けて開発を加速させている。


Quantinuumの開発ロードマップ
(プレスリリースより)













参考文献:
※1:Honeywell Announces $600 Million Capital Raise For Quantinuum at $10B Pre-Money Equity Valuation to Advance Quantum Computing at Scale(リンク

※2:Quantinuum Selected by DARPA to Advance to First Stage of Quantum Benchmarking Initiative(リンク

※3:Quantinuum Unveils Accelerated Roadmap to Achieve Universal, Fully Fault-Tolerant Quantum Computing by 2030(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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