従来ドローンの課題を補完する、水素推進・静音設計・再充填運用の技術的特徴
同社技術の中心は、水素燃料電池を用いた高エネルギー密度の推進システムである。水素は単位重量あたりのエネルギー量が大きく、化学反応で発電する燃料電池と組み合わせることで、従来のバッテリードローンを大幅に上回る長時間飛行を可能にする。同社の機体は10時間以上の連続飛行や長距離の航行に対応でき、監視、輸送、捜索といった長時間の運用が求められるミッションで高い性能を発揮する。
加えて、水素燃料電池は燃焼を伴わないため、内燃エンジンと比較して騒音や振動が極めて少なく、排出物は水のみで環境負荷も低い。静音・ゼロエミッションという特性は、都市部の上空、自然保護区域、夜間監視といった運用環境に適しており、従来は制約が大きかったエリアでの新たな活用を可能にする。環境規制が進む中で、こうしたクリーンな技術は社会的に優位性を持つ。
さらに、同社のドローンはバッテリー充電を待つ必要がなく、タンクへの水素再充填によって短時間で再稼働できる点も大きな利点である。これにより、連続して任務に投入できる稼働率の高さを確保し、災害対応やインフラ点検、防衛用途など、即応性が求められる場面で実運用の強みを発揮する。従来ドローンの“充電待ち”というボトルネックを解消することで、より大規模かつ継続的なオペレーションを支える技術基盤となっている。
製造能力強化と量子センシング搭載を柱とする同社の成長戦略
同社はまず、米国内での製造・生産基盤の拡充に注力する。2025年には米バージニア州に新本社を構え、製造能力を拡大することで、顧客需要の急増に対応すると表明されている。これにより、防衛・商用・公共安全用途を含む多様なミッションに対し、安定的かつスケール可能な供給体制を整える。
また、同社は量子技術を手掛ける IonQ との資金提供および提携関係を活かし、ドローンに量子センシングや量子通信などを統合する計画だ。これにより、GPS信号が遮断されるような環境や電子妨害下でも運用可能な耐妨害性、ならびに高信頼かつセキュアな通信機能を備えた無人機の開発を目指すとしている。
CEOはこれについて、「私たちが築こうとしているのは、単なるドローンではなく、ミッション対応可能な航空プラットフォームだ」と述べており、今後の展開における技術高度化と実戦性の両立を重視している。