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量子センサーで半導体内部を可視化するQuantumDiamonds、9,100万ユーロ確保 ミュンヘンで生産開始

ドイツ・ミュンヘンを拠点とするQuantumDiamondsは、ダイヤモンド量子センサーを用いた半導体検査装置を開発・製造する企業である。2022年にミュンヘン工科大学からスピンアウトし、2.5D・3Dパッケージ内部の電流経路を非破壊で可視化する「QDm.1」を展開している。

同社は2026年7月、合計9,100万ユーロの資金を確保した。内訳は1,500万ユーロの株式調達と、欧州半導体法に基づく7,600万ユーロの非希薄化資金である。資金はQDm.1の増産や、ウエハー単位の検査技術の開発に充てる。

また同月、総投資額1億5,200万ユーロを計画するミュンヘン生産拠点の最初の区画を稼働させた。研究開発向けの装置供給から、半導体産業へ検査装置を継続的に供給する生産体制への移行を進める。

熱ではなく磁場から故障位置を絞り込む量子検査

AI半導体では、演算チップやメモリ、チップレットを垂直方向に積層する高度なパッケージングが広がっている。一方、配線や接続部が複数の層に埋め込まれるため、短絡や断線が起きた位置を外部から特定することが難しくなっている。

熱画像や発光を利用する既存の検査では、複数層から生じる信号が重なり、故障位置を正確に絞り込めない場合がある。内部を調べるためにパッケージを削ると、解析に時間がかかるだけでなく、故障状態そのものを変えてしまう可能性もある。

QDm.1は、チップへ電流を流した際に生じる微弱な磁場を測定し、その分布から内部の電流経路を再構成する。電流がどこを通り、どの位置で途切れたり、想定外の方向へ流れたりしているかを非破壊で画像化する仕組みである。

同社は米国のEurofins EAG Laboratoriesや、台湾のIntegrated Service Technologyに装置を導入している。大手半導体メーカーとも検証を進めており、量子センシングを研究用途から実際の故障解析へ広げる段階に入っている。

NVセンターの蛍光から電流分布を再構成

QDm.1は、合成ダイヤモンド内部の「窒素空孔センター(NVセンター)」をセンサーに用いる。NVセンターへ緑色レーザーとマイクロ波を照射すると、周囲の磁場に応じて赤色蛍光の強さが変化する。この変化を読み取ることで、半導体内部の微弱な磁場を検出する。

装置はダイヤモンドセンサーを検査対象へ近づけ、画素ごとの磁場の向きと強さを取得する。さらに、磁場と電流の関係を逆算することで、埋め込まれた配線を流れる電流密度や経路をマイクロメートル単位で再構成する。

同社はApple A12プロセッサを搭載した半導体パッケージでも技術を検証した。熱画像では発熱箇所しか確認できなかったのに対し、QDm.1では内部の電流経路まで可視化し、その後のX線CTで同じ位置に短絡を引き起こす亀裂が確認されたという。

製造ラインへ組み込める処理速度が焦点

ミュンヘン拠点では、まずQDm.1の生産能力を引き上げる。同時に、故障した個別チップを研究室で解析する現在の用途から、製造工程中のウエハー全面を測定する「InLine full-wafer mapping」への拡張を進める方針である。



ウエハー段階で電流の異常を検出できれば、不良品が後工程へ進む前に問題を発見し、歩留まりの改善につなげられる可能性がある。一方、測定範囲を広げながら感度や位置精度を維持し、量産ラインに必要な処理速度を実現できるかが今後の焦点となる。

共同創業者兼CEOのKevin Berghoff氏は、新拠点を通じて個別装置の供給から生産ラインの構築へ移る方針を示した。量子センサーを半導体工場の検査工程へ組み込めれば、同社の技術は故障解析にとどまらず、製造中の品質管理を支える基盤へ広がる可能性がある。


参考文献:

※1:QuantumDiamonds raises €91 million to set the global standard for next-generation chip inspection( リンク

※2:Bavarian Deputy Minister-President and German Federal Ministry for Economic Affairs (BMWE) visit as QuantumDiamonds opens first section of its new Munich production facility( リンク

※3:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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