光の波長から地表を分析する観測衛星を開発するPixxelが1億ドル調達
インド・ベンガルールと米ロサンゼルスを拠点とするPixxelは、地表から反射する光を細かな波長に分け、農作物や水域、鉱物などの状態を分析するハイパースペクトル観測衛星と解析ソフトウェアを開発する企業である。
同社は2026年9月7日、シリーズCで1億ドルを調達した。TemasekとSeraphimが共同主導し、360 ONE Asset、IMM Investmentなどが参加した。累計調達額は1億9,500万ドルとなり、次世代衛星、解析基盤、政府向け宇宙システム、量産設備へ投じる。
複数センサーを束ねる地球観測基盤への拡張
同社は2025年に計6基の「Firefly」を軌道へ投入し、現在は可視光と近赤外線を約135の帯域に分けて観測している。次世代の「Honeybee」では短波赤外線まで範囲を広げる。別途、合成開口レーダー(SAR)や超高解像度の光学衛星も整備し、観測条件や対象に応じて異なるデータを組み合わせる構想である。
資金調達の目的は、衛星画像の販売だけでなく、撮影、解析、衛星製造を一体で提供する事業への拡張である。同社はNASAや米国家偵察局(NRO)との契約を持ち、インドでは官民共同の地球観測衛星12基の整備を主導する。インドと米国の製造能力を増やし、自社用に加えて政府・企業向け衛星の受注にも対応する。
当社メディアでも以前、端末に搭載するハイパースペクトルセンサーを開発するSpectricityを取り上げた。Pixxelは同じく光の波長ごとの違いを利用しながら、約5m単位の地表を衛星から広域に測る。今回の出資者に日本企業は含まれず、日本企業との提携や日本市場に向けた計画も公表されていない。
反射光を細かな波長に分けて物質の違いを捉える仕組み
物体は、材質や水分量、状態によって吸収・反射する光の波長が異なる。一般的なカメラが赤・緑・青の3色、マルチスペクトル衛星が数個から十数個の広い帯域を記録するのに対し、ハイパースペクトルセンサーは連続する多数の狭い帯域を測る。各画素に得られる反射の並びを「スペクトル指紋」として比べ、植生のストレスや水質、鉱物の違いを推定する。
Fireflyは約470〜900nmを約135帯域で測り、地上分解能は約5.4m、観測幅は38kmである。受信した画像には大気中の水蒸気や微粒子、センサーのばらつき、地形による位置ずれが含まれるため、同社は補正モデル「Isofit」などで影響を取り除き、地表面での反射率へ変換して提供する。これにより、異なる日時や場所のデータを比較しやすくする。
2027年に初号機を打ち上げる予定のHoneybeeは、観測範囲を2,500nmまで広げ、短波赤外線を含む約260帯域を備える計画である。解析基盤「Aurora」は衛星画像や外部データを重ね、機械学習や自然言語による指示から変化を抽出する。ただし、雲による遮蔽や地表の混在、校正誤差は残るため、現地データとの照合が精度を左右する。
2027年の次世代衛星打ち上げとインド・米国での量産
同社は2027年にHoneybeeの初号機を打ち上げ、短波赤外線、SAR、高解像度光学画像を順次追加する。解析ソフトウェアの機能を高めるとともに、インドと米国で衛星の量産能力を拡大し、民間の地球観測から各国政府の安全保障・防災用途まで顧客を広げる方針である。
共同創業者兼CEOのAwais Ahmed氏は、ハイパースペクトル画像による「地球の健康診断」から、観測と解析、各国向けの宇宙能力を備えた基盤へ構想を広げると説明した。SeraphimのCEOであるMark Boggett氏も、AIを使う地球観測と政府向け宇宙システムの双方で同社の位置付けを評価している。今後は複数センサーのデータを一貫した判断材料へ変えられるかが焦点となる。
参考文献:
※1:Pixxelによる1億ドルのシリーズC調達発表(リンク)
※2:同社HP(リンク)
※3:Pixxel主導の官民共同地球観測衛星計画に関する発表(リンク)
※4:当社メディア「ハイパースペクトルセンシングのSpectricityがシリーズBで約17億円の資金を調達」(リンク)
【世界のスペーステックの動向調査やコンサルティングに興味がある方】
世界のスペーステックの動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。
先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら
CONTACT
お問い合わせ・ご相談はこちら